イケメン警視、アルバイトで雇った恋人役を溺愛する。


 店を出るまで心臓はだいぶ脈打っていたから、店から出られてようやく安堵出来た。

 けれど……気を抜くのが早かった。


「えっ」

「っ!?」


 ふと、後ろを向くと……先ほどいたあの男が迫ってきていた。手には、ギラギラと光る、鋭利なもの。そしてそれは……湊さんの腹部分に向かってきていた。


「確保っ!!」


 一体何があったのか、数秒間分からなかった。けれど、あのトレンチコートを着たマスクの男を、駐車場で押さえて手錠をかけている湊さんの姿を見て、ようやく理解が出来た。

 そして、湊さんがナイフを遠ざけたところで、先ほど向けられていたものがそれだったのかと思うと寒気がした。


「軽犯罪法違反、そして殺人未遂の罪で逮捕する」


 殺人未遂、という言葉に寒気を覚えた。すぐに110番しろと指示されて我に返り、すぐにスマホを取り出したのだ。