まさか、こんなところで蒸発した母と会うとは……タチが悪い。
そこであざ笑うかのようにこちらを見てくる早瀬さんは、スマホをちらちらと見ている。待って、まだ何か……
「瑠奈!」
「……」
いつも、いつも私にお願いをしては口だけの感謝の言葉しかくれなかった。家にいる事が少なくなり、そして帰ってきた時にはテーブルをお酒の瓶や缶で埋め尽くしていた。
派手なメイクに、派手な洋服を着た母は、今までと同じようにとても美人。でも、その大きな宝石のようなものを付けたネックレスは見覚えがない。それ、もしかして……
私に押し付けた借金で、買ったのでは?
私を見た母は……ぱぁ! と微笑み私に駆け寄ってきては抱きしめてきた。
この匂いは、よく知ってる。母の好きな香水の匂いだ。
「ごめんなさいねぇ、一人にしちゃって寂しかったでしょう?」
母は、いつもそうだ。いつも、こう言う。
「あらま、瑠奈こんな服持ってたかしら? 誰から貰ったの?」
母の中には、私が自分で買ったという選択肢はない事は知っている。この言い方をするという事は、貰った相手しか気になっていないという事。
なら、私の事をどう思っているんだろう。
「あ、そうそう。今日はね、私のお気に入りのレストランで夕食をするつもりなの。瑠奈も一緒に行きましょう? 瑠奈の作る料理も好きだけど、大変よね?」
「……」
一体、誰と食事するつもりなんだろう。もしかして……という時、またこの部屋に入ってくる女性がいた。
「……これは一体どういう事かしら?」
見覚えがあった。ブラウンの長髪で、背の高めな大人っぽい女性。……さっき、早瀬さんのスマホで見た女性。
恐らく、彼女は……元父親の再婚相手だ。



