イケメン警視、アルバイトで雇った恋人役を溺愛する。


「サンドウィッチと、ブラックコーヒーを一つずつ」

「かしこまりました」


 あの後、居酒屋のアルバイトはやめてしまった。警察の方々の行きつけになってしまっていたから。顔を合わせるのが気まずくなってしまうし、それに湊さんにとってもあまりよくないと思った。

 代わりに、違うアルバイトを見つけて合計2つのアルバイトをしている。生活もあるし、借金も残っている。けれど琳と湊さんのおかげでそこまで切羽詰まっているわけではないから安心して働いている。

 居酒屋の代わりに選んだのは、とあるカフェだ。接客の方を担当させてもらっている。とても働きやすいし、先輩方も、来店されるお客様もとても優しい人ばかり。


「浮かぬ顔だね」

「え?」

「あ、いや、ただそう見えただけだから。でも、もし何か悩んでるなら……聞くよ?」


 そう声をかけてくれたのは、私と同じくらいの歳の男性客。彼はいつも来てくださっては決まってカウンター席に座る。働き始めた私にも、優しく接してくれている。


「あ、いや、深い意味はなくて……ただ、口に出した方が気分も晴れるって聞くだろ? だから、話したいなら聞くってだけ」

「あ……いえ、大丈夫です。そんな大層な悩みでもないので」

「そっか。じゃあ言いたくなったら聞くから、いつでも声かけてよ」

「ありがとうございます」


 歳が近いから、話しやすいというのもあるかもしれない。

 けれど、言えないものは言えない。アルバイトの内容は契約の関係上誰にも言えないし、私としても言うつもりはない。

 だから、誰にも相談出来ない。琳なら出来るだろうけれど、心配させたくないから言いづらくて結局言えていない。