その後すぐに他の警察の方が駆け寄ってきた。野木さんに「遅いぞ~」と言われていたけれど、そんなに遅かっただろうか?
被害者である私には、これから事情聴取を受けないといけないらしく、野木さんに付いていった。
「さて、と。待たせてごめんな。じゃあ事情聴取始めるぞ」
「は、はい」
さっきまで、ちょっと待っててな、とだいぶ待たされていたけれど、ようやく事情聴取が始まった。
警察である野木さんに新鮮さを感じつつも、聞かれた事を全て答えていたら……
「萩本警視長……!?」
「ここからは私が代わろう」
大体60代の男性がやってきた。警視長、という事は……湊さんは警視だから、いくつ上の人だろう。
一瞬渋った顔をした野木さんは席を空け、警視長さんがそこに座った。そして、下がっていいという指示で野木さん含め全員が出ていってしまい、私と警視長さんの二人となってしまった。
言っていた通り、「さ、事情聴取だね」と続いた。初めての事だし、相手は警視長さんという偉い方だから緊張してしまい、声が震えそうになってしまった。けれど、何故事情聴取の担当が偉い人に代わったのだろう、という疑問もあった。
「よし、これで終了だ」
「あ、ありがとうござ……」
「さて、では次に違う質問をするとしよう」
「えっ」
違う質問、とはどういうことなのだろうか。先ほど、もう事情聴取は終わったと自ら言っていた。では、これからされる質問はどういった意図があっての事なのだろうか。
「矢野湊君は知っているだろう?」
「は、はい」
「君とお付き合いしていると聞いた」
いきなり出てきたその名前に、ドキッとしてしまった。けれど、今はそれどころじゃない。
何故、ここで湊さんの話が出てくるのだろうか。
早瀬さんから、湊さんに彼女が出来たと噂になっていると聞いたから、この方の耳に入るのは不思議な事ではないけれど。
「非常に申し訳ないのだが……――別れてくれないか」



