とはいえ、自分に言い聞かせても、心の片隅に期待している部分がある。そんな事を思ってはいけないのに。自分では分かっているのに、消せない。
意識してしまっている、と自分で認めているけれど、なら、自分はどうしたいのだろうか。無事にこのアルバイトが終わってほしい? うん、それは当然の事だ。じゃあ、他には?
なら、1週間ぶりに会えて嬉しかった、と思うのは……どうしてだろうか。仕事が出来るから? 分からない。いや、さすがに恋愛感情だのなんだのでは……ない、はず。
こんなに意識してしまっているのは、お泊まりしてしまった時のアレのせい。そしてアレは、湊さんが悪い。ただそれだけだ。そう、それだけ。
「……光ってる……!」
「ぷっ」
「……」
目の前に置かれた、特上の握り寿司。高級感が溢れていて、ネタが光っていた。ただそのままを口に出してしまっただけなのに、どうしてそう笑うのだろうか。馬鹿にしてる?
……うまっ。
ネタはもちろん、シャリも美味しい。何と素晴らしい握り寿司なんだ。これはもうこれから先食べる機会はないだろうから、今日は味わって食べなきゃ。
「……美味いか?」
「最高です。ありがとうございます」
「そうか。……じゃあ、また連れてきてやる」
「……」
また、連れてきてやる。
それは、一体いつの話だろうか。もうそろそろで、アルバイトが終わるというのに。
明日? 明後日? いや、こんなに忙しい人なのだから、そんなに時間をさける事は出来ないはずだ。
じゃあ、いつ?
どうして、私は期待しているのだろう。
ただの、アルバイトの分際で。



