イケメン警視、アルバイトで雇った恋人役を溺愛する。


 他人の家にお泊まりだなんて、最近はない事だった。それに、昨日の事もあってだいぶ緊張してしまう。


「味噌汁、飲むか?」

「あ、はい」

「今日は仕事だから朝飯食ったら家に送ってやる」

「あ、いえ、自分で帰れますので……」

「別に気にするな」


 先ほどの事もあるから、目が合わせられない。さっきのTシャツからいきなり仕事姿にチェンジしているから、というのも新鮮すぎているけれど。

 ちらりとお腹を見てしまって、警察官さんなんだから腹筋バキバキなんだろうなぁ、と思ってしまいそうになったけれど、アホかそんな事考えるなと自分に言い聞かせた。

 全く、なんて事してくれてるんだこの雇用主は。

 それよりも、とっても美味しい料理に集中しよう。お邪魔する機会はもうないかもしれないから、食べられるのはもしかしたら今日で最後かもしれない。

 寂しい気がするのは、それだけ湊さんに胃袋を掴まれてしまっているという事だろうか。役得ではあったけれど……悲しいな。

 とにかく、美味しそうな朝食は味わって食べよう。いただきます。