イケメン警視、アルバイトで雇った恋人役を溺愛する。


 いや、待てよ? そういえば昨日、湊さんは誰かにベッドを使われると大激怒すると聞いたような気がする。けれど、私ベッドにいません? しかも、本人と一緒に。抱きしめられてるし。

 見たところ、湊さんは怒ってない様子だし。

 昨日早瀬さん、泊まりたいって言ってたけれど、生理的に無理って返してたよね。

 ……どゆこと?

 さてと、と身を起こした湊さん。すると、何かに気が付いたような素振りをし、私に顔を近づけてきた。耳元で囁いてきて……


「手は出してないから安心しろ」

「……」


 時間が止まったかのように、固まった。そんな様子を見てクスクス笑いつつもベッドから出ていた。


「ここで着替えていいか?」

「……」


 そう言って、着ていたTシャツの裾を少しめくって見せてきた。

 その言葉と、チラッと見えたお腹で、ぶわっと顔が熱くなり火照ってしまった。今、何と言った? ここで着替えるですって……!?

 面白がっているのか、冗談だと笑って出ていった。


「……心臓、やば」


 しばらくは、顔の火照りと心臓が収まらなかった。布団から湊さんの匂いがするから余計だ。……私は断じて変態ではない。そこは勘違いしないでほしい。

 最近、冗談が過ぎる気がする。あの人って結構冗談言う人だったんだ、というよりもこのままじゃ心臓がもたない。あの人は顔が整ってるから余計だ。

 アルバイトはあと残り1ヶ月。けれど、終了まで私が無事でいられる事を祈っていたほうがいい気がする。