イケメン警視、アルバイトで雇った恋人役を溺愛する。


 少しずつ浮上してくる意識を感じ、少しずつ重たい瞼を開いた。

 おかしいな、こんなにふかふかな布団は初めてだ。枕の高さもいつもと違うような気がする。

 ようやく目が使いものになったと思った次の瞬間、目を疑った。目の前に、眠っている湊さんがいたからだ。

 数十秒、頭の機能が停止した。そして、一言。


「……やっちまった……?」


 とりあえず、服は乱れてない、大丈夫。……いや、大丈夫ではないんだが。

 けれど、私の一言で起こしてしまったらしい。湊さんの目が開かれた。


「おはよう」

「お……はよ、ございます……」


 いや、のんきに朝の挨拶をしている場合じゃないのでは?

 すぐに理解した。これ、湊さんの家のベッドだ。そして、一緒に寝てしまっていて、何故だかぎゅっと抱きしめられている。


「……やらかしました?」

「やらかすようなほどではないから安心しろ。頭、痛いか」

「……いえ、正常です」

「そうか」


 いや、正常なのかどうかは疑ってしまいそうだが。でも、何故こんな事になってしまっているのだろうか。昨日、同僚の皆さんと食事をして、お酒飲んで……あぁ、お酒か。

 やっぱり、昨日の焼酎がマズかったのか。飲ませてきた海さんを恨んだほうがいいのか、それを回避できなかった私を罵ったほうがいいのか。いや、アルコールの匂いに気が付かなかった私が悪い。


「あの、皆さんは……?」

「代行呼んで、生きてる奴はタクシーに突っ込んだ」


 い、生きてる奴は……


「そ、ですか……あの、すみませんでした……」

「別にいい。話は聞いた。あれは広山が悪い」

「……」


 私は何と返せばいいのだろうか。