「はぁ……」
焼酎はビールより度数が高いから、あまり得意ではない。さすがにアルバイト中に酔ってしまうのはマズいけれど、もう飲んでしまっては仕方ない。これ以上は飲まないようにしよう。早く湊さんに戻ってきてもらわないと……と思いつつトイレを出ると、何やら話し声が聞こえてきた。
この声は、湊さんだろうか。でも、違うところで電話をしていた気がする。すると、女性の声まで聞こえてきた。
「ね~ぇ~湊君、今日泊まっていい?」
これは、早瀬さんの声だ。じゃあ、湊さんと二人で話してるって事か。
「は? ダメに決まってるだろ」
「どうして? いいじゃん別に。ベッド、か~して?」
私、アルバイトで彼女役してるけど……早瀬さんがいるなら私でなくてもいいのでは? と、一瞬思ってしまった。けれど、寒気がした。
「あ? 生理的に無理なんだが」
……こわっ。
生理的に無理だなんて言いすぎな気もするけれど、それよりどすの利いたその声の方が怖かった。さっき野木さんがベッド使おうとすると大激怒するって言ってたけれど、正解だった。
怖い怖い、とさっさとその場を離れてリビングに戻った。椅子に座るタイミングで湊さんが戻ってきたけれど、早瀬さんの姿はない。
「はいどーぞ、瑠奈ちゃん」
「……これ、なんです?」
「お酒♡」
「おい、もう飲ませるな」
「下戸は黙ってて。お酒のお付き合いも大事な事よ? ほらほら、瑠奈ちゃんどーぞ!」
「飲まなくていいぞ、瑠奈」
もう焼酎が入っているから、これ以上はまずい気がする。水だと思って結構飲んじゃったし。さすがにアルバイト中に酔っぱらうなんてことは出来ないし。
結局、湊さんが奪い取り野木さんの方に回してくれた。よかった、と安堵していたのだが……やってしまったのだ。



