イケメン警視、アルバイトで雇った恋人役を溺愛する。


 慣れた手つきでカートにかごを乗せ、押しつつ店内に入った湊さんに続いた。野菜が陳列されているコーナーに入り、野菜をかごに入れ始める。

 さすが貧乏、と自分で言っていいのか分からないが……安い値段の方に目が行ってしまう。もやしは私がよく行くスーパーの方が安いけれど、ここではレタスや玉ねぎが安い。

 買っていきたい、とまで思ってしまったがこれから行くのは湊さんの家。そして同僚さん達が来て食事もする。流石に買っていけない。何となく、悔しいな。


「レタス、買いたいか?」

「……分かってて言ってますか?」

「さぁな」


 ……これは分かってて言ってるな。すみませんね、貧乏なもので。


「湊さん、レタスはこっちの方が新鮮ですよ」

「こっち? じゃあ入れてくれ」


 仕方ない、アルバイトとして恋人役を全うさせていただこう。お給料の為だ、全力で務めさせていただきます。

 と、思いつつ肉コーナーに向かうと、湊さんは大量のお肉をかごに入れだした。


「お肉、ですか」

「あぁ。アイツらには肉を食わせておけばいい」

「そう、ですか……」


 確かに警察官さん達はいっぱい動くだろうし結構食べるんだろうけれど……女性も二人いるはず。それなのに、この量ですか。

 まぁ、食べきらなかったら……湊さんの明日の朝ご飯になるか。


「おやつ、買いたいか? 買ってやるぞ」

「いりません」

「そうか。ならこのまま会計に行くか。ついでにトイレットペーパーも買っていこう」

「……はい」


 本当に、私をからかうのが好きらしい。私ってそんなに子供に見えるのだろうか。一応もう成人した大学生なのだが。


「私、持ちますけど」

「彼女に荷物持たせる彼氏がいると思うか」


 けれど、そこはちゃんと彼女と言ってくれるらしい。おこちゃまだから持てないだろ、とは言わないのか。

 本当に、湊さんはよく分からない人だ。