イケメン警視、アルバイトで雇った恋人役を溺愛する。


 ようやく、私達三人は水族館を後にした。野木さんの車に乗せてもらい、そのまま湊さんの家に向かわれてしまった。

 車内で内心ドキドキしつつもスマホを確認すると、湊さんからのメッセージが届いている事に気が付いた。自分の家に関する事だ。

 そのままお邪魔していいとのことで、家の暗証番号と家番号などが書いてあった。本当に良かったのだろうか。私は大丈夫と言ったのに。


「はい、着いたよ。ここでいい?」

「あ、はい、今日はありがとうございました」

「いいっていいって、俺達も楽しかったし」


 じゃあまた一緒に食べに行こうね! という言葉を残して二人が乗る車は去っていった。

 さて、困ったぞ。これから私はこのマンションに乗り込まないといけないのか。

 どうしたものか、とマンションの目の前でスマホを片手に立っていると、スマホに着信音が鳴り出した。その相手は、湊さん。


「もしもし」

『瑠奈か。さっき広山から瑠奈を送り届けたって連絡があったんだ。今、マンションの前か』

「あ、はい」

『入り方、分かるか』


 ……分かりません。

 電話で教わりつつ、マンションの中に入り、ようやく湊さんの家まで辿り着いた。


『普通に家で過ごしてくれればいい。あるものは勝手に使ってくれ。そうだな……20時には帰れるか。戻ったらちゃんと家に送るから安心してくれ』

「わ、かりました。待ってます」

『あぁ。何かあったら連絡してくれ』


 じゃあ、と通話は終了した。


 ……アルバイト、雇用主の家に来てしまった。