私達に背中を向け人並みに隠れてしまった湊さん。
隣にいらっしゃる同僚さん達の視線に危機感を覚え、私も連れてってくれと追いかけたい気持ちでいっぱいである。
「と、いう事は終わった後に湊んちに送り届ければいいって事か」
「さっ、許可をいただいたし湊君なんて忘れて思いっきり遊ぼっか!」
待てよ、今、野木さんなんて言った。湊さんの家に、私を送り届けると言ったか。となると、この鍵は……
湊さんの家の、鍵。
……マジか。
私に寂しい思いさせてしまっているから、今日はこれから二人と遊んで、最後は湊さんの家にお泊りと。そういう事だろうか。
さっ、行こう行こう! と海さんに腕に抱き着かれ連行されてしまったのだった。鍵は、とりあえずバッグに仕舞っておいた。無くしたら大変な事になる。
けれど、思った。これ、湊さんが持っていた家の鍵だ。じゃあ、これがなければ湊さんは帰っても家に入れない、という事だろうか。
……やべぇな。
「瑠奈ちゃん瑠奈ちゃん! イルカさん見に行こうよ!」
「イルカあっちか」
そんな私の危機的状況を当然この二人は全く知らない。だから、私の今の心情がバレてしまえば湊さんに何か言われてしまうという事になる。
「瑠奈ちゃん、今日はリフレッシュしようよ。湊君の事もあるだろうし、大学生だから大学生活でも少しは疲れとかあるでしょ? だからさ、今日はぜーんぶ忘れちゃいなって」
「……ありがとうございます」
「うんっ!」
いや、全然ありがとうじゃないんですすみません。ハメ外してリフレッシュなんてしたら大変な事になる。ここは身を引き締めて乗り越えないといけない。ここでやらかしたらアルバイトのお給料がもらえなくなる。
内心覚悟を決めて、海さんの繋いできた手を握り返した。



