イケメン警視、アルバイトで雇った恋人役を溺愛する。


 今は、私と海さんを先頭に、湊さんと野木さんが付いていくようになっているけれど……変な事にならないかドキドキである。一応後ろに湊さんがいるけれども。


「わ~可愛い! カワウソ!」

「可愛いですね……」


 私の隣にいる海さんは、本当に女子力が高い。その隣にいる私は女子力がなさ過ぎて残念になっているように見えるだろうか。やっぱり海さんを見習ってマネしてみるべき?

 でも、海さんと同じくちゃんとカワウソも可愛いと思っているからまだセーフだと思う。女子力は塵ほどではあるだろうけれど残ってる。よかった。


「瑠奈」

「え?」


 カワウソを海さんと一緒に見ていた時、私の名前を呼ぶ湊さんの声が聞こえてきた。振り向くと、スマホのカメラレンズが私の方に向けてある事に気が付いた。


「海入った? 俺にもちょうだい」

「残念ながら入ってない」

「マジ?」

「瑠奈撮るなよ。有料」

「……お前、そういうところあるのな」


 写真を撮られたらしい。それに気が付いた海さんは、後ろから私を抱きしめ野木さんに写真を撮るようお願いしていた。たった今撮るなと言われていた事を知っているにもかかわらずだ。

 とはいえ、有料にしなくてもいいのではないだろうか。あ、まぁ、あと2ヶ月で彼女役が終わるのだからその方がいいのか。


「ったく……海、お前の見たかったのそこにあるぞ」

「え? あっ!」


 見たかったものとは。そう疑問に思っていたら手を引っ張られ引きずられるかのように連行されていってしまった。その行き先とは……


「いたぁ!」

「……ちんあなご、ですか」

「そう! ちんあなご! ちんっ……ぷっくくっ、ちん、ちんあなご……ぷふっ……」


 先ほどの女子力高い女の子とは全く違った様子に、口がふさがらなかった。ちんあなご……なるほど、そういう事か……?


「馬鹿丸出しだろ。昨日までSNSで俺に見せまくりだしな」

「だって! ほらっ! 可愛いでしょ!」

「名前にツボっただけだろ」

「ぷっ、ふふっ、だって、ちん、あなごっ……くくっ……」


 また爆笑しだした海さんに、私はどんな反応を見せればいいのか分からなかった。隣に移動してきた湊さんに助け舟として視線を向けると、ため息を吐いている彼が見えた。これは、日常茶飯事なのだろうか。


「言ったろ、能天気ばっかりだって」

「いや、でも……」

「あんなもんだぞ、あいつらは」

「……そうですか」


 国民を守ってくださるカッコいい警察官さん達のはずだ。確か、海さんは交通課だった気がする。カッコいい女性警察官のはずなんだけど、この姿を見ると全然警察官に見えないな。

 まぁ、今はオフなんだろうけどさ。仕事になるとスイッチが入るんだろうけど……ちんあなごにツボる女性警察官……何も言わないでおこう。

 でも、ちんあなごは可愛い気もする。いろんな模様のちんあなごがいるけれど……じっと見ると、さっきの海さんの事があるから恥ずかしくなってくる。うん、やめよう。