イケメン警視、アルバイトで雇った恋人役を溺愛する。


 フラグ回収、とはこの事を言うのだろうか。


「湊?」


 水中トンネルを渡りきる辺りで、湊さんに声をかけた人がいた。その相手は……私も見た事のある人だった。そして、それは二人だ。


「へ~偶然じゃん湊。デート?」

「見れば分かるだろ。邪魔するな」

「ちょっと待ってちょっと待って、何、彼女さん独り占めしたいの? せっかく会ったんだから4人で回ろうよ」


 飲み会に参加していた二人で、カップルだと紹介された二人だった。彼氏の野木和也さんと、彼女の広山海さんだっけ。

 二人も仲の良いカップルらしく、私達と同じく手を繋いでいる。見ただけではあるけれど、お似合いのカップルだと思う。


「る~なちゃんっ! この先にペンギンが見られるコーナーがあるんだって。瑠奈ちゃんペンギン好き? それともイルカショー見る?」

「おいっ!」


 私の、手を繋いでいないほうの手を広山さんに取られ、さぁ~出発! と歩き出してしまった。これは、強制連行というやつですか。やばいな、警察の方に囲まれている私は大人しく連行された方がいいのかしら。

 そして、トンネルの先にあったのは……これは、マンボウだろうか。


「和也にそっくりよね」

「え?」

「おい、聞こえてるぞ」


 これは悪口だろうか。マンボウ、可愛いと思うけど。