仕方なくスマホを見ていると、時計の数字が一つ進んだ。電話帳を開き、先ほどメッセージを送ってきた彼にかけた。
すると、2コールで出た。
「もしもし」
『瑠奈か』
「あ、はい」
『悪いな、昨日黙って家に置いてって』
「……」
一体、この話は何なのだろうか。昨日、湊さんが謝るようなことはあっただろうか。それに、家に置いてってとは?
『今日、大学昼で終わりだったよな。今日も来るか?』
「……あの、湊さ……」
『俺は遅くなるから合鍵で入ってくれ』
「……」
『夕飯? そうだな……ハンバーグがいいな』
「……」
話の意図が分からないどころか全く噛み合わず黙っていても、湊さんの話がどんどん進んでいる。これ、もしかして……誰かに聞かせてる?
そして、私は途中から何も話すことなく会話が終了したのである。いや、これは会話になっていないか。
ツー、ツー、という会話終了の音のみが鳴り、耳から離したスマホを真顔で見つめる事しか出来なかった。
「……どしたの」
「……全くよく分からん」
「は? 電話しろって言われたんでしょ?」
琳は、途中から全く話さなくなった私を不思議に見ていたけれど、対する私は全くよく分からず混乱中である。
やっぱり、誰かに聞かせていたのかな?
だって、私一昨日は泊まってないから当然昨日は湊さんの家にいないし、合鍵だってもらってない。となると、一昨日家に泊まる事を知っている誰かって事?
すると、スマホにまたメッセージが通知された。
『さっきの会話は嘘だから来なくていい』
……なるほど、そういうことですか。了解しました。
「……私、ちゃんと仕事したらしい」
「あぁ、そういう事ね。ちゃんと彼女やってるじゃん」
「稼がせていただいてますから」
「その調子で頑張れ。……いや、いっそのこと本気で付き合っちゃえば?」
「……は?」
琳からとんでもない言葉が出てきた事に、一瞬思考が停止した。



