「で、逮捕されずに帰還出来たのね。安心安心」
「……笑い事じゃないんですけど」
「でもあの人に助けてもらったんでしょ? よかったじゃない」
次の日大学で琳に捕まり、飲み会でのことを包み隠さず暴露させられてしまった。何となく楽しんでいるようにも見えて、こっちは苦労しているのにと殴り飛ばしたくなってしまった。
だが、彼女もまごう事なく私にアルバイトを提案してくれた張本人。その給料を借金の足しに出来たのでそんな事をするのはとんでもない。
「けどアンタ、本当に正直すぎるわね。その早瀬って人の質問に、はい、って答えちゃうなんて」
「挽回したんだからいいでしょ」
「まぁ、そうだろうけどさ」
湊さんは大丈夫だと言っていたから安心して大丈夫だろう。とりあえず、ミッションクリアだ。
そんな時、スマホが鳴った。画面を覗くと、たった今話題となっていた人物、矢野湊さんだ。メッセージが来ていたらしく……
『今暇か』
と、来ていた。
今はちょうどお昼時。私達はカフェでテーブルを囲んでいたので、暇というわけではない。
『1分後に電話をかけてくれ』
一体どういうことなのだろうか。1分後に電話、ですか。
全くこの意図が分からず、電話をかけるくらいならとOKスタンプを送った。
「どうしたの?」
「1分後に電話をかけろって」
「彼氏?」
「彼氏じゃありません。雇用主です」
「いいじゃん、アルバイトは3ヶ月なんでしょ? まだその期間なんだから彼氏で合ってるでしょ」
「まぁ、そうだけど……」
期間限定の桃たっぷりパンケーキをお預けにされてしまった。



