イケメン警視、アルバイトで雇った恋人役を溺愛する。


 湊さんの同僚さん達に会うことになると聞かされた時はだいぶ緊張したけれど、そこまでする事はなかった。

 よく知っている場所だったというところもあるけれど、彼が言っていたような能天気、ではなくて、私のことを気遣って盛り上げてくれる人達ばかりだったからかもしれない。

 でもそう思うと、偽物の私としてはちょっと心が痛い。

 さっき、どこで出会ったの? と聞かれた時にはドキッとしてしまった。すかさず湊さんが助けてくれたけれど……正直にホテルレストランですと言ってしまったらだいぶ怪しまれていた事だろう。

 そう思うと、警察官さん達の前で嘘をついてしまうのは……心苦しいな。まぁ、もうすでに警察官の一人が嘘をついているのだけれど。


「る〜なちゃんっ!」

「え?」


 後ろから、元気な声が私を呼んだ。まさかアルバイト仲間か? と思ったけれど、湊さんの同僚の方で、急遽参加した方だった。確か、早瀬さんだっけ。彼女は、私に駆け寄り腕に絡みついてきた。


「一緒にトイレ行こっ!」

「あ、はい」


 よく知っているお店だからトイレの場所には迷わずに行けた。途中でスタッフと目が合ったけれど気を遣ってか声をかけないでいてくれた。よかった。