イケメン警視、アルバイトで雇った恋人役を溺愛する。


 買っていただいた美味しい牛肉に感謝の言葉を伝えつつも、もう一度デートを行い、そして約束の日となった。

 その日は大学で講義を受けなければいけない日だったので、以前買っていただいた服を身に付け大学に向かった。


「瑠奈ってこういうのも似合うのね」

「着せられてる感あるでしょ」

「そう? 感じないけど。これ、もしかして向こうが選んだの?」

「そう」

「瑠奈は服を選ぶスキル皆無だもんね」


 ……言ってる事は正しいけれど、それはそれでムカつく。

 その時、スマホにメッセージが届いた。大学前まで来たらしい。迎えに来てくれたことは嬉しいけれど、大学前、ですか。

 昨日、近くのカフェの前に集合でいいと言ったはずなんだけどな。彼は容姿端麗で車もカッコいいから目立つ。だから噂にならないか心配だったんだけど……仕方ない、早く行こう。

 じゃあバイバイ、と言おうとしたら「一緒に行こ!」と私の腕に抱き着いてきた。大学前まで一緒に行くらしい。でも、思った。この子、本来行くべきだったお見合い相手なんだよなぁ、と。琳としては、お見合い相手だった人物の顔を拝みに行こうかな、という事なんだろうな。

 その好奇心に呆れつつも二人並んで大学の校舎を出た。何となく、女子大学生の声ががやがやしているような、していないような。あぁ、いた。


「ねぇ瑠奈、あの人?」

「そう、あの人」


 大学の校門から少しだけ離れたところに停めてあった、見た事のある車。その助手席に背を預けてスマホを見ている人物が一人。

 さて、どうしたものかと考えていた時にこちらに気が付いたのか彼の視線が向けられてきた。隣の琳は……


「やべぇな。スペックたっか……」


 と、呟いた。うん、言いたいことは分かる。

 容姿端麗で、しかもエリート警視ときた。高収入で出世間違いなしのハイスペックなのだからそうなる。