イケメン警視、アルバイトで雇った恋人役を溺愛する。


「料理はするのか」

「しますけど……節約料理ですね」

「節約料理……例えば?」

「そうですね……昨日は卵が安売りしてたので、もやしの卵炒めにしました」


 昨日の食卓を思い出しつつそう答えると、同情するような目でこちらを見てくる。でも、ここは同情しなくてもいい気がする。だって半額ですよ、半額。半額の卵があれば買うのが普通でしょ。もやしの卵炒め、美味しいでしょ。


「夕飯、おごるぞ」

「あの、気を遣わなくてもいいですから」

「栄養失調で倒れられたらこっちが困る」

「もやしと卵は栄養満点なんですから心配ありません。それに昨日は豆苗も入ってましたし」

「……」


 また同情する目を向けてくる。確かにお金を持ってるエリート警視さんにとっては質素な食事に見えるかもしれないけれど、美味しかったんだから別に気にする事じゃない。

 その後、今度は湊さんの時計を買いに行った。予備の時計を使っているらしいんだけど、「時計をやったからお返しをもらった」と言うつもりらしい。確かに、仲良し雰囲気を出さないと上司に伝わらないよね。

 湊さんによれば、お見合いに行った事もちゃんと彼女は知っていて、終わった後に会いに行った、という事だそうだ。口裏を合わせるためとはいえ、嘘ばかりになっている。

 とはいえ、完全に嘘というわけではない。時計も一応私が選んだし、お見合いでは断った時点でお見合い終了、そして提案を受け入れた時点で彼女役となったし、その後ディナーのデザートが来たのだから彼女とデザートを楽しむデートを(おこな)ったと言っていい。うん、大丈夫。