イケメン警視、アルバイトで雇った恋人役を溺愛する。


 すると、着替えたか、と外から彼に声をかけられた。ちょっとためらってしまったけれど、これも仕事の内だとカーテンを開けた。


「……」


 腕組みをし、黙ったまま頭から足まで観察されている。だいぶ居心地が悪いな。似合わなかっただろうか。


「着ていてどうだ。気に入ったか」

「あ、はい」

「よし、採用。次だ」


 と、手に持っていた服を渡された。またもや一式だ。

 そして、先ほどと同じように着替え、カーテンを開け、観察される。また同じような質問をしては「はい」と答えた。

 また採用と言われ、彼の手に服を持っていなかったからこれで終わりかと思ったら……


「次は靴」

「えっ」

「支給品」

「……はい」


 おい、アルバイト。その言葉を言われそうになったので、黙ることにした。

 私の意見は一切いらない。そういう事なんだろうなぁ……はは。家に置く場所、あったかな。支給品という事は最後に返すことになるし、汚さないように気を付けないと。と思いつつ、ついていった。

 いつもスニーカーの私に、彼は「ヒールは履いたことあるか」と聞かれ、ないと答えると……なら履いてみるかと言われ購入する事になった。確かに、さっき買った服にはヒールの靴が似合いそうだ。じゃあ、練習しないとだなぁ。支給品ではあるけれど、大学に行く時にでも履いてみよう。


「そういえば……ピアス穴、開けてるのか」

「あ、はい、友人に開けてもらったんです」


 琳が誕生日プレゼントでピアスを送ってくれた時があり、その時ピアス穴を彼女に開けてもらった。プレゼントされたピアスは、せっかくもらったんだからと毎日つけるようにしていて、今もつけている。

 けれど、思った。そういえば湊さんもピアスを開けているな。それも……いくつも。

 警察官なのに、意外だな。そう思ってしまった。