他人の車に乗るなんて、琳の車に乗せてもらったくらいだから、結構緊張する。琳の車、と言っても運転手付きで私達二人は揃って後部座席に並んでいたから余計だ。アルバイトあるんだから乗ってけ乗ってけと車に押し込まれた記憶がある。
車を出発させた彼に、これからどこに行くのか聞いてみると買い物に行くと言ってきた。
「来週、同僚達と飲みに行くことになったんだ。彼女を連れてこいとうるさくてな。他にも一組カップルが参加するから、という事で了承したんだが……いけるか」
「は、早くないですか」
「だからその前にもう一回デートを入れる。予定は?」
手帳を開き休みを伝えると、あっさり決まってしまった。飲み会の日も大学の講義があるけれど、その時間は空いていたから即決まり。
まぁ、こっちは大学生だから合わせやすいというのもあるけれど。
でも、もう会うのか。ちゃんと出来るかな。
けれど、今朝スマホで通帳を見てみたら琳が振り込みをしてくれた他に、湊さんの名前で振り込まれた形跡があった。しかも、結構な額。そこには前金と書いてあった。いいのかな、と思いつつ聞いてみると……
「だいぶ強制的でもあったからな。その謝罪も入ってる」
……そんな事はない。けど、ありがたくいただきます。
「あとは……やる気が出るだろ」
「……」
私の事を、よく分かっていらっしゃる。確かお見合いの時に、大金で困っていて追い詰められている奴ほど扱いやすい人間はいない、と言っていたけれど……本当だった。
はい、頑張らせていただきます。



