お見合いがあった次の日。今日も朝から講義があり、大学生の私は大学に向かい、琳を発見してはとっ捕まえた。昨日のお見合い代行バイトの報告をするためだ。
それなのに、一向に話が始まらない。
「ほんっとうに私って強運の持ち主よね!! あの席のチケットが取れたなんて人生でそうそうないものね!! あぁ~もうカッコよくて最っっ高だったわ!」
「あの、報告」
「目の前に来てこっちに向かってウィンクしてくれたのよ!! 手も振ってくれたの!! あ~もう一生忘れられないわ!!」
「琳」
「あ、何々?」
おい、何々じゃないわ。昨日は本当に大変だったんだから。それなのにこの子はだいぶ楽しんだみたいね。私を利用して。まぁ50万もらえるんだからありがたいけどさ。
「昨日、ちゃんと断ってきたよ。と言っても、相手の方も最初から断るつもりだったみたい」
「あ、そう? よかった。ホテルの料理、美味しかったでしょ。あそこパパのお気に入りなのよ」
「へぇ~」
うん、確かに美味しかった。ここは天国かと疑ってしまうくらいに。一生に一度の体験をさせてもらえたのは私も一緒だったか。
「それで、さ」
と、次は琳が会話を切り出した。彼女の向ける視線は私の顔ではなく……私の左腕の手首。
「その腕時計、瑠奈持ってなかったよね? 貰ったの?」
私はお金がない事を知っていたから、そう聞いてきたのだろう。確かに私はお金がないからこんな時計を買えるわけがない。だってこれ、男性物の高そうな時計なんだもん。
彼女の言う貰ったもの、は正解だけど少し違う。
「これ、支給品なの」
「……支給品? 何の?」
「新しいアルバイトの支給品」
そして、お見合いで提案されたアルバイトの内容と、それを受けるきっかけも全て包み隠さず彼女に説明した。



