世界はそれを愛と呼ぶ



「─ま、それとは別に気にはなるけど」

相馬は興味津々。
知的好奇心が強い甥(息子)は、目を輝かせている。

「相馬にそう言って貰えると、助かるよ。─希雨さんの件に関して、叔父さんが凄く怒ってたんだ」

「どうして?」

「叔父さんを可愛がってくれた叔母さんの娘だから」

「……?」

「あはは、混乱するよね〜俺もしたよ。御園陽希さんには、すごく感謝しているんだ。彼女を見つけ出して、大切にしてくれているから。あの腐った家を、終わらせてくれたから」

その言葉で、陽向は過去を思い出す。
相馬も思い至ったのか、

「魅雨叔母さんの身内か!」

と、声を上げた。

御園魅雨─彼女は、陽向の片割れである陽希の愛妻であり、希雨の母親。物心つく前から座敷牢で育ち、陽希が救い出した当初は何も知らなかった、不思議な娘。

『貴方は、陽希の弟と聞きました。─弟とはなんですか?』

初対面は、そんな言葉から始まった。

『君は、陽希の妻だ。なら、私の娘だよ』

『お義父様(おとうさま)!』

『ああ。どうした、我が娘』

甘やかす父さんに、魅雨は自分に父親ができたことを喜んでいた。─実父には監禁されていたから。

「そう。御園魅雨さん。彼女は俺の大叔母」

「それは……」

「表向きになったものではないんだ。戸籍が無かったでしょう?祖母もそうだったみたいで、何も知らぬ娘だったみたい。母方の祖父に娶られ、母が産まれ、俺が産まれたんだって。父方の祖父は御巫統さまの息子なので、本当に両親とも御園家とずぶずぶなんだよね」

えへ、と、笑う絃。
そして、意外にも身近に迫っている魔の手に、

「……消すぞ、陽向」

キレている父・陽介と、

「抱き締めてもいいか?絃」

と、怒りながらも泣いている叔父、御巫統。
素直に腕を広げた絃は統に強く抱き締められて。

「─絃、君はパーティーに来なさい」

「え、なんで」

「君は私の曾孫なんだろう。なら、甘やかさせてくれ」

「ええ?でも、ちゃんとしたお孫さんとか」

「ああ、今度紹介しような」

……急な甘やかしモードに、絃は目を点にしている。
御園家は基本、これが当たり前のスタンス。
そして、御巫統に関してはその器が著しく大きい。

「一人になるのは危ない、私といなさい」

「ま、待って?統さま、ちょっと展開が」

「統さま、なんて呼ばなくていい。おじいちゃんでいい」

「お、おじいちゃん……?」

「ああ、そうだよ。可愛いな、絃」

……小さい声で「俺、16歳なんだけど」と、呟いたのは聞こえないフリをしておこう。