「絃の質問に答えるなら、まず、自分の義理の母親にあたる第三夫人とその子供、つまり、自身の義弟にそこまで身を粉にする理由がないだろう?」
「ただ、家族想いなだけかもしれないのに?」
「それは無いな。あの家で、それはない。凌達が絡んでいるのなら、あの双子は好奇心からか、あの家に飛び込んだんだろうな。その理由はわからんが……」
「めちゃくちゃ断言するじゃん。その通りだけど」
でも、その理論は筋が通ってないよね、と、絃が言う。
「そうだな。だが、最近、黒橋を始めとする企業に、人材が藤島から流れ込んできていることに関しても、優秀なコンサルタントが後ろにいることは間違いなく……それをすることで、その”お嬢様”側の勢力は削られているだろ?」
「どうしてそう思うの?」
「俺の計算が正しければ、もう、あの会社は、藤島は機能していないだろう。調べさせたところ、社長夫妻の行方も分からなくなっているとか」
「……」
「勿論、行方は追わせているけどな。この情報が既に広まっていることから、あの会社の株は大打撃。きっと、それで私服を肥やしていた連中を支える為、奴らは身銭を切り始めるだろう。そうなれば、いちばんに犠牲が向かうのは間違いなく、常磐家では第三夫人たちだ。だから、凌は俺にわざわざ接触を測り、あの家の中で、独立した会計で、第三夫人は生活しているのだという証拠を作り上げた」
「それを作り上げたら、どうなるの?」
「簡単に言えば、その会計で巡るものは第三夫人の所有物だ。だから、当主は手を出せなくなる。その会計の元となったものも、第三夫人の持ち物だとわかれば、余計にな。……だが、当主は言うだろう。第三夫人のものは全て、自分が所有するものだと。そう言って、彼女から全てを取り上げようとするだろう。だからこそ、凌は双子を連れて行ったのだ。双子がいれば、それだけで戦力になるから。そして、第三夫人に諦めぬ気持ちを芽生えさせられる。後継者たる末子も、双子を導とするはずだ」
「でも、結局は全財産は取り上げられているじゃん」
「ああ。でも、その会計には、仁が関わっている。コンサルタントとして活躍していたのも、仁だろうな。自身の父親のことをよくわかっているようで、”そうなるよう”導いた、と言ってもいいかな」
「つまり?」
「全財産を、第三夫人から奪い取ったとしても……第三夫人はまた、新たに財産を築くだろう。それをまた、奴は奪う。それを繰り返させる」
「……」
「それに味をしめた頃、奴は、既に抜け出せない蟻地獄に誘い込まれているだろうな」
相馬は楽しそうに笑い、「自分が使い込んでいるのは、御園の資産だとも知らずに」と、呟いた。


