「─ふたりは、とても強かったわ。私、ここ数日の間、何度も助けられたもの」
「……」
「夏鶴さん、あなたが強いことはわかったわ。でもね、あまり危険なことをしてはダメよ。あなたが守りたいその人達は、本当に守られるだけの人かしら?」
夏鶴は莉華さんの言葉に、ハッとした顔をする。
「あなたが危険なことをして、その人達は悲しまない?─私はね、何度もそれで失敗したの。優しい大好きな人を守りたくて、必死になって、最後は心を壊したわ。身体だって、衰弱し切って……守りたかったはずの人をね、沢山悲しませたの。貴方に私と同じ道を辿って欲しくないわ」
夏鶴の手を取って、莉華さんは微笑む。
「アイラさん、あなた達にとっても大切な方なのね。でも、安心して?絶対、救ってみせるわ。だから、ひとりで頑張りすぎてはダメよ。人を頼れるようになって、笑えるようになって、甘えられるようになった沙耶さんを見て、ふたりは良かったって、喜んでいたでしょう。だったら、その笑顔を曇らせる真似はしちゃダメ」
「……っ」
「あなた達の大切な沙耶さんはね、相馬に愛されているの。私達の息子で、この御園家の総帥で、賢くて、優しい相馬に誰よりも愛されてる。意外とね、御園家の総帥ってすごいのよ?血筋だけでなれるものじゃないんだから」
この場の空気に合わないほど、にこにこな莉華さん。
グッ、と、相馬の沙耶を抱く手に力がこもり、腕の中から彼を見上げれば、少し照れくさそう。
「─堪らんだろ。俺も若い頃、あの笑顔にやられた」
「陽向さん」
「真っ直ぐで、陽だまりのような女性(ひと)なんだ。眩しくて、手を伸ばして……沢山傷つけてしまったが、だからこそ、うんと愛して、大事にしたい」
「……」
「大丈夫。俺たちの息子なんだ。お前は無敵だよ」
陽向さんはそう言って、相馬の頭を撫でた。
相馬は変わらず照れ臭そうで、いつの日か、一緒に寝ていた日に零していた話。
『育ててくれた伯父夫妻を、本当の両親のように慕っている。そのふたりがたくさん愛情をくれたから、周囲が言うほど、愛に飢えてはいないんだ。でも年齢を重ねれば重ねるほど、父さん母さんとは呼べなくなってる』
それはきっと、総帥としての重圧とかもあるのだろう。
「っ、沙耶?」
頭を預けて、相馬を見上げる。
急な沙耶の行動に驚きを見せた相馬に、
「嬉しいね」
と、沙耶は微笑んだ。


