世界はそれを愛と呼ぶ



「─な?」

震える手を握られ、顔を覗き込まれる。
不敵に笑う姿は、沙耶に安心感をもたらして。

沙耶は深呼吸をした。
過去に怯えて、震えて泣き続けるのはいい加減、終わりにしなくてはならない。

「……ん。ごめん、相馬」

彼の腕の中で、繰り返した深呼吸。
聞こえ、伝わってくる彼のぬくもり、鼓動は、沙耶に孤独ではないことを教えてくれる。

相馬は微笑んで、沙耶の頭をポンっと撫でて。

「─こちら側で集めた情報だが、春の家を除く四季の家は沙耶の家族を恨む女より派生したと思われる、とある組織に心酔しているという」

相馬の言葉に合わせて、陽向さんがパソコンで資料を提示してくる。御園家にいる情報屋が仕上げたものらしく、それは普通の人間には辿り着けない内部情報まで詳しく、細かく記されている。

「だが、夏や秋はともかく─……冬の当主は、心酔しているふりにしか見えない、と」

「ふり?」

「ああ。とある筋の人間曰く、夏の当主は彼女達のために生きて死ぬ、その言葉が相応しいほどに愚かな人間らしい。能力もなく、ただ己の血筋から、当主の座を欲しいままにしている、と。そして、冬の当主に対して、頭があがらないそうだ」

「でも、四季の家の当主であり、春の家の当主ではない以上、ふたりは対等な立場のはずですよね」

冬璃の言葉に、相馬は頷いた。夏鶴も続いて。

「なら、どうして?─ああ、利益が、恩がありましたね」

─この様子からして、このふたりはかなり深淵まで勝手に覗き込んだらしい。

「何か知ってるのね、ふたりは」

「うん。─だって、沙耶を長い間苦しめて、いつかは健斗さんやユイラさんに牙を向けるかもしれないんだよ?俺達が、それを黙って見過ごすと思う?」

「……」

夏鶴の目は、座っていた。
とても怒っている。この子はずっと、幼い頃から。