「四季の家の現状、皆様の現在のお立場、御園家御当主が望まれていること、それらはある程度、私は把握しております。なので、説明は不要。しかし、加減が─……」
「─あっ、ちょっとぉ〜早いよ、朝霧」
淡々と話す朝霧の肩に触れた、ツインテールのメイド。
「あ、祈もいんじゃん」
「やっほー、相馬といい、うちの弟といい、めちゃくちゃにやったね!見てて気持ちよかった!」
両手をぱんっと合わせて、にっこりと笑う彼─神宮寺祈は、慧や叶夢の兄である。
……ツインテールのメイド服姿だが、兄である。
「祈」
「総一郎から逃げないようにって、見張りを頼まれているんだから。先に行かないでよね」
「……今更、撒くようなマネはしませんよ。総一郎さまのあの肝の座りよう、千波様譲りですかね」
はぁ、と、ため息をつく朝霧と、笑う祈。
大体、何があったかは予測できるが。
「……で、父さんは?」
氷月が問うた。─相馬兄さんに全てを擦り付け、逃げるのならば、それでいい。
だが、そうした暁には、心の底から軽蔑するだろう。
自分達は相馬兄さんのように優しくなれない。
何があっても、それが本能によるものであっても、幼かった相馬兄さんに全てを押し付けた大人を許していない。
氷月の冷たい声音を受けて、朝霧は目を伏せた。
自分たちが逃げたことは自覚しているようだが、父さんの居場所までは言わないつもりか……そう思った時。
「春馬様なら、総一郎が捕まえに行ったよ〜」
と、祈が言った。
「え?」
「え?だから、春馬様でしょ。逃げてないよ。あの方ももう、逃げるつもりはないんじゃないかな」
「……」
正直のところ、水樹も氷月も、父親のことを、御園春馬のことをよく知らない。
あの母親に利用された、優しく弱く、可哀想な人というイメージしかなく、父親として接された記憶もない。
いつだって、母親に振り回されていた。
取り乱す母親を抱きしめて、なだめ、どんどん顔色を悪くして、そのまま消えてしまったから。
「全部、自分の責任だと思っていらっしゃるみたいだよ」
「……祈の言う通りだ。自分の弱さが、総一郎様をはじめとする5人のあなた方の苦しみを生み出したと思われている。和子さまの死も、何もかも。本当の番に出会えた今も、別れを選んだほどに」
「……チッ」「はあ!?」
氷月と、水樹の声が重なった。
俺たちの心情は、双子だからか、よく似ている。
「今更、過去は変わらない。相馬兄さんが傷ついた過去も、あの人が死んだことも!なのに、今更?今更、自分の番と別れて、贖罪に来るの?」
「どうして?ここまで逃げたんだったら、勝手に幸せになればいいよ。俺達はこれ以上、相馬兄さんを傷つけなければ何も言わない」
水樹と氷月の言葉を浴びて、朝霧は小さく頷く。

