「ここか」

寮であるマンションに到着した。会社から事前に貰っている鍵で部屋の中へと入る。部屋には生活に必要な家具は一式揃っているため、荷物の片付けはあっという間に終わってしまった。

「どうしよう。時間、結構あるな……」

壁につけられた時計を見れば、まだ午後十五時を少し過ぎた頃である。このままただ部屋でボウッと過ごすのはもったいない気がした。

「近所に何があるか見に行ってみようかな」

スマホと財布を手に桜士は立ち上がる。寮の周りをぐるりと歩き出す。寮を左側に進んでいくと住宅街になり、右側に進んでいくとスーパーや薬局などがあるようだった。

「スーパーとかの場所はちゃんと覚えないとね」

桜士が辺りを見回しながら歩いていると、路地を見つけた。その路地の手前には看板がある。手作りらしき木でできた看板だ。そこには「カフェ　Pearl」と書かれていた。

「へぇ〜。こんな路地にカフェなんてあるんだ」

神奈川にもカフェはたくさんある。インスタ映えなどを売りにしているところが多く、テレビで取り上げられているカフェもあった。