賢治は窓を閉めてもずっと絵菜の背後にいる。窓に賢治の手がついたままだ。絵菜は息を吐き、言う。
「近い。離れて」
「なぁ、お前ずっと変だよ。……俺、もっと前みたいに話したい」
賢治の言葉に絵菜の心が揺れた。口から言葉が出そうになり、慌てて口を閉ざす。言葉を何か話したら、もう耐えられなくなるだろう。今でも限界なのだ。
「私、そろそろ帰るから」
絵菜はそう言い、賢治の腕の隙間をすり抜けて帰ろうとした。しかし、絵菜の動きがピタリと止まった。賢治に腕を掴まれたためである。刹那、絵菜は賢治と初めて会った時のことを思い出した。
賢治と初めて会ったのは、中学校の入学式だった。真新しいセーラー服に袖を通し、絵菜は中学校に向かって急いでいた。入学式に遅刻しそうになっていたのだ。
「や、やばい!遅れる!」
必死に走っていた絵菜だったが、何かに躓いて転んでしまいそうになる。反射的に目を閉じた絵菜だったが、いつまで経っても転ぶことはなかった。
「危ね〜……。ギリギリセーフ!」
「近い。離れて」
「なぁ、お前ずっと変だよ。……俺、もっと前みたいに話したい」
賢治の言葉に絵菜の心が揺れた。口から言葉が出そうになり、慌てて口を閉ざす。言葉を何か話したら、もう耐えられなくなるだろう。今でも限界なのだ。
「私、そろそろ帰るから」
絵菜はそう言い、賢治の腕の隙間をすり抜けて帰ろうとした。しかし、絵菜の動きがピタリと止まった。賢治に腕を掴まれたためである。刹那、絵菜は賢治と初めて会った時のことを思い出した。
賢治と初めて会ったのは、中学校の入学式だった。真新しいセーラー服に袖を通し、絵菜は中学校に向かって急いでいた。入学式に遅刻しそうになっていたのだ。
「や、やばい!遅れる!」
必死に走っていた絵菜だったが、何かに躓いて転んでしまいそうになる。反射的に目を閉じた絵菜だったが、いつまで経っても転ぶことはなかった。
「危ね〜……。ギリギリセーフ!」


