拝啓、あしながおじさん。 ~令和日本のジュディ・アボットより~ 【改稿版】

「そうだね。珠莉ちゃん、ありがと。じゃあそうしようかな」

「あたしもそれでいいと思うよ。まどろっこしいけど、仕方ないよね」

「うん」

 やっぱり、さやかも珠莉が言った通り、〝あしながおじさん〟の正体を知っているらしい。

「じゃあわたし、勉強が終わったらおじさまに手紙書くね」

「うん! そうと決まれば、早く勉強終わらせよ!」

 この嬉しいニュースのおかげで、この後三人の勉強が(はかど)ったのは言うまでもない。


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『拝啓、あしながおじさん。

 おじさま、ビッグニュースです! わたし、作家デビューが決まりました!
 今日の午後、さやかちゃんと珠莉ちゃんと三人でテスト勉強をしてた時に、出版社の人から連絡が来たんです。わたしが応募した作品が、文芸誌の短編小説コンテストで佳作に選ばれた、って。その作品は、その文芸誌の来月号に掲載されるそうです!
 この小説は、夏休みにわたしが書いた四作の中から純也さんが選んでくれた一作です。彼には本当に、感謝しかありません!
 わたしとおじさま、そして純也さんの夢が早くも叶いました。しばらくは雑誌に短編が載るくらいですけど、いつかは単行本も出してもらえるように、わたし頑張ります! その時には、ぜひ買って下さいね。
 短いですけど、今回はこのお知らせだけで失礼します。テストの結果、楽しみにしてて下さい。奨学生になったんですから、絶対に優秀な成績を取ってみせますよ!

             十月十八日    作家デビュー決定の愛美』

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「――よし、こんなモンでいいかな。純也さんには、珠莉ちゃんが知らせてくれるって言ってたし」

 これまで純也さんのことをさんざん書いてきたのに、いきなりそれをやめてしまったら、〝あしながおじさん〟も首を捻るだろう。そして、勘繰るに違いない。「もしや、自分の正体がバレてしまったのでは?」と。
 だから、これでいい。――愛美は一人頷いた。