「純也さんが、愛美の気持ちに気づいてたとしたらどう?」
「えっ? どう……って」
愛美はグッと詰まる。もしもそうなら、両想いということで、彼が愛美との交際をためらう理由はなくなるわけだけれど……。
「案外、そうかもしれませんわよ?」
電車に乗り込んでからずっと黙り込んでいた珠莉が、ここへきてやっと口を挟んだ。
「……珠莉ちゃん、何か知ってるの?」
もしかしたら、彼女は叔父から彼の愛美への想いを打ち明けられているのかもしれない。愛美は淡い期待を込めて、珠莉に訊ねた。
「知っていても、私からは言えないわ。それはあなたが叔父さまご本人から聞かなければ意味がないことじゃありませんの?」
「……うん、そうだよね」
珠莉の言うことはごもっともだ。でも、だからといって純也さん本人に「わたしのこと好きなんですか?」と訊く勇気は愛美にはない。
「――あー、やっぱり寮に着く頃には六時半回りそうだな、こりゃ」
神奈川県に入った時点で、さやかがスマホで時間を確かめて呻く。すでに六時を過ぎていた。
「とりあえず、学校の最寄り駅に着いたら晴美さんに連絡入れとくよ。『あたしたちの晩ゴハン、置いといてほしい』って」
「そうだね。やっぱりクレープだけじゃ、夜お腹すくもんね」
――さやかはその後、最寄り駅に着くと、言っていた通り寮母の晴美さんに連絡したのだった。
* * * *
――その日の夜。愛美は部屋の共有スペースで、スマホを持ったまま固まっていた。
「う~~~~ん……、なんて書こうかな……」
せっかく純也さんと連絡先を交換したので、さっそく彼に連絡しようと思い立ったのはいいものの。この時間、電話は迷惑かも……と思い、メッセージアプリを開いたのはいいけれど、文面が思いつかないのだ。男の人にメッセージを送るのは初めてだし……。
(とりあえず、無難に今日のお礼でいいかな……)
よし、と気合を入れ、キーパッドを叩いていく。
『純也さん、今日はありがとうございました。すごく楽しかったです('ω')
東京にはまだまだ面白そうなスポットがありそうですね。また案内してほしいです。』
勢い込んで送信すると、すぐに「既読」の表示が出て――。
『メッセージありがとう。
僕も楽しかったよ。愛美ちゃんたちと一緒にいると、何だか若返った気分になった(笑)
また一緒にどこかに行こうね。……今度は、できたら珠莉たち抜きで。』
という返信が来た。
「え……」
はっきり「好きだ」といわれなくても、この文面だけで何となく分かる。――これは、紛れもないデートのお誘いだ。
「……いやいや! まだそうと決まったワケじゃないよね」
愛美は逸る気持ちを抑えようと、そう自分に言い聞かせる。まだ本人の口から聞く(もしくは、メッセージで伝えてもらう)までは、百パーセント決まりではないのだ。
「はぁぁぁぁ~~~~……」
恋にため息はつきものだと、小説で読んだことがある。まさか、自分自身がこんな風になるなんて、一年前には想像もつかなかったのに。
(早く純也さんのホントの気持ちを聞いて、安心したいなぁ)
それまでは、愛美に心穏やかな日常は訪れないだろう。彼の言動一つ一つに一喜一憂させられて、ハラハラドキドキしっぱなしに違いない。
「……とりあえず、落ち着こう」
こういう時は、〝あしながおじさん〟に手紙を書くのが一番だ。今日一日の体験を聞いてほしいというのもあるし――。
愛美は勉強机に向かうと、今日原宿の雑貨屋さんで買ってきたばかりの新品のレターセットを開けた。
****
『拝啓、あしながおじさん。
お元気ですか? わたしは今日も元気いっぱいです。
先月のお手紙でもお知らせした通り、今日は純也さんからのお招きでさやかちゃん・珠莉ちゃんと一緒に東京の原宿に行ってきました。
朝からいいお天気で、絶好のお出かけ日和でした。
東京って、というか原宿って、楽しい街ですね! 色んなお店や場所に行きました。ミュージカルを鑑賞した劇場、オシャレなカフェ、可愛い雑貨屋さん、古着屋さん、クレープ屋さんに高級ブランドのショップ、レインボーわたあめのお店……。
どこも面白くて、何から書いていいか分からないくらいです。
純也さんとは、午後一番でJR原宿駅の前で待ち合わせしてました。いつもはスーツ姿の純也さんも、今日はちょっとカジュアルな私服姿。でも背が高いので、モデルさんみたいでカッコよかったです!
わたしたち四人は、まずは駅前のオシャレなカフェでランチを頂きました。
食後はミュージカルの開演時刻まで時間があったので、竹下通りを散策してました。その時に、雑貨屋さんでさやかちゃんが見つけてくれた三人お揃いの可愛いスマホカバーを、純也さんがプレゼントしてくれました!
わたしの誕生日が先月の四日だったことを知らなかった純也さんは申し訳なさそうに、「知ってたら、先月寮に来た時に何かプレゼントを用意してたんだけど」っておっしゃってました。でも、わたしは一ヶ月遅れの誕生日プレゼントでも、すごく嬉しかったんです。男の人からのプレゼントなんて初めてだったから(あ、おじさまがお見舞いに送って下さったお花は別です)。
その後、バッタリ治樹さんに会いました。さやかちゃんはお兄さんとの遭遇にちょっと迷惑そうでしたけど、珠莉ちゃんが何だか治樹さんのこと気に入っちゃったみたいで……。わたしには分かる気がします。もしかしたら、珠莉ちゃんは治樹さんに恋してるんじゃないかって。
「えっ? どう……って」
愛美はグッと詰まる。もしもそうなら、両想いということで、彼が愛美との交際をためらう理由はなくなるわけだけれど……。
「案外、そうかもしれませんわよ?」
電車に乗り込んでからずっと黙り込んでいた珠莉が、ここへきてやっと口を挟んだ。
「……珠莉ちゃん、何か知ってるの?」
もしかしたら、彼女は叔父から彼の愛美への想いを打ち明けられているのかもしれない。愛美は淡い期待を込めて、珠莉に訊ねた。
「知っていても、私からは言えないわ。それはあなたが叔父さまご本人から聞かなければ意味がないことじゃありませんの?」
「……うん、そうだよね」
珠莉の言うことはごもっともだ。でも、だからといって純也さん本人に「わたしのこと好きなんですか?」と訊く勇気は愛美にはない。
「――あー、やっぱり寮に着く頃には六時半回りそうだな、こりゃ」
神奈川県に入った時点で、さやかがスマホで時間を確かめて呻く。すでに六時を過ぎていた。
「とりあえず、学校の最寄り駅に着いたら晴美さんに連絡入れとくよ。『あたしたちの晩ゴハン、置いといてほしい』って」
「そうだね。やっぱりクレープだけじゃ、夜お腹すくもんね」
――さやかはその後、最寄り駅に着くと、言っていた通り寮母の晴美さんに連絡したのだった。
* * * *
――その日の夜。愛美は部屋の共有スペースで、スマホを持ったまま固まっていた。
「う~~~~ん……、なんて書こうかな……」
せっかく純也さんと連絡先を交換したので、さっそく彼に連絡しようと思い立ったのはいいものの。この時間、電話は迷惑かも……と思い、メッセージアプリを開いたのはいいけれど、文面が思いつかないのだ。男の人にメッセージを送るのは初めてだし……。
(とりあえず、無難に今日のお礼でいいかな……)
よし、と気合を入れ、キーパッドを叩いていく。
『純也さん、今日はありがとうございました。すごく楽しかったです('ω')
東京にはまだまだ面白そうなスポットがありそうですね。また案内してほしいです。』
勢い込んで送信すると、すぐに「既読」の表示が出て――。
『メッセージありがとう。
僕も楽しかったよ。愛美ちゃんたちと一緒にいると、何だか若返った気分になった(笑)
また一緒にどこかに行こうね。……今度は、できたら珠莉たち抜きで。』
という返信が来た。
「え……」
はっきり「好きだ」といわれなくても、この文面だけで何となく分かる。――これは、紛れもないデートのお誘いだ。
「……いやいや! まだそうと決まったワケじゃないよね」
愛美は逸る気持ちを抑えようと、そう自分に言い聞かせる。まだ本人の口から聞く(もしくは、メッセージで伝えてもらう)までは、百パーセント決まりではないのだ。
「はぁぁぁぁ~~~~……」
恋にため息はつきものだと、小説で読んだことがある。まさか、自分自身がこんな風になるなんて、一年前には想像もつかなかったのに。
(早く純也さんのホントの気持ちを聞いて、安心したいなぁ)
それまでは、愛美に心穏やかな日常は訪れないだろう。彼の言動一つ一つに一喜一憂させられて、ハラハラドキドキしっぱなしに違いない。
「……とりあえず、落ち着こう」
こういう時は、〝あしながおじさん〟に手紙を書くのが一番だ。今日一日の体験を聞いてほしいというのもあるし――。
愛美は勉強机に向かうと、今日原宿の雑貨屋さんで買ってきたばかりの新品のレターセットを開けた。
****
『拝啓、あしながおじさん。
お元気ですか? わたしは今日も元気いっぱいです。
先月のお手紙でもお知らせした通り、今日は純也さんからのお招きでさやかちゃん・珠莉ちゃんと一緒に東京の原宿に行ってきました。
朝からいいお天気で、絶好のお出かけ日和でした。
東京って、というか原宿って、楽しい街ですね! 色んなお店や場所に行きました。ミュージカルを鑑賞した劇場、オシャレなカフェ、可愛い雑貨屋さん、古着屋さん、クレープ屋さんに高級ブランドのショップ、レインボーわたあめのお店……。
どこも面白くて、何から書いていいか分からないくらいです。
純也さんとは、午後一番でJR原宿駅の前で待ち合わせしてました。いつもはスーツ姿の純也さんも、今日はちょっとカジュアルな私服姿。でも背が高いので、モデルさんみたいでカッコよかったです!
わたしたち四人は、まずは駅前のオシャレなカフェでランチを頂きました。
食後はミュージカルの開演時刻まで時間があったので、竹下通りを散策してました。その時に、雑貨屋さんでさやかちゃんが見つけてくれた三人お揃いの可愛いスマホカバーを、純也さんがプレゼントしてくれました!
わたしの誕生日が先月の四日だったことを知らなかった純也さんは申し訳なさそうに、「知ってたら、先月寮に来た時に何かプレゼントを用意してたんだけど」っておっしゃってました。でも、わたしは一ヶ月遅れの誕生日プレゼントでも、すごく嬉しかったんです。男の人からのプレゼントなんて初めてだったから(あ、おじさまがお見舞いに送って下さったお花は別です)。
その後、バッタリ治樹さんに会いました。さやかちゃんはお兄さんとの遭遇にちょっと迷惑そうでしたけど、珠莉ちゃんが何だか治樹さんのこと気に入っちゃったみたいで……。わたしには分かる気がします。もしかしたら、珠莉ちゃんは治樹さんに恋してるんじゃないかって。



