三人とも、今日は張り切ってオシャレしてきた(珠莉はいつもファッションに気を遣っているけれど)。普段着よりはファッショナブルで、それでいて〝原宿〟というこの街にも溶け込めそうな服を選んだのだ。
愛美は胸元に控えめのフリルがあしらわれた白のカットソーに、大胆な花柄のミモレ丈のフレアースカート。そこにデニムジャケットを羽織り、靴は赤のハイカットスニーカー。髪形もさやかにアレンジしてもらい、編み込みの入ったハーフアップにしてある。
さやかは白い半袖Tシャツの上に赤のタータンチェックのシャツ、デニムの膝上スカートに黄色の厚底スニーカー。
珠莉は肩の部分に切り込みの入った淡いパープルの七分袖ニットに千鳥格子の膝丈スカート、クリーム色のパンプス。髪には緩くウェーブがかかっている。
「こんにちは、純也さん。今日はお招きありがとうございます」
純也さんにお礼を言った後、愛美は彼の服装に見入っていた。
(わ……! 私服姿の純也さんもカッコいい……!)
愛美の知っている限り、いつもはキチっとしたスーツを着ている彼も、今日は何だかカジュアルな格好をしている。
清潔感のある白無地のカットソーにカーキ色のジャケット、黒のデニムパンツに茶色の編み上げショートブーツ姿だ。
「あら、叔父さま。今日は何だかカジュアルダウンしすぎじゃありません?」
「あのなぁ……。原宿歩くのに、スーツじゃいくら何でも浮くだろ?」
いつもは紳士的な口調の純也さんも、姪の珠莉が相手だと砕けた物言いになるらしい。
「それにしたって、ちょっと若づくりしすぎじゃございません?」
「失礼な。俺はまだ若いっつうの。今日び、三十なんてまだまだ若者だって」
(〝俺〟……? こんな打ち解けた純也さん、初めて見たかも)
愛美は今まで知らなかった純也さんの一面を知り、嬉しくなった。
「愛美ちゃん、今日はいつもと髪形違うね」
「あ、分かっちゃいました? さやかちゃんがやってくれたんですけど、どう……ですか?」
純也さんは女性不信らしいと聞いたけれど、女性のちょっとした変化には気がつくらしい。気づいてもらえた愛美は、さっそくできた彼との会話のキッカケに食らいつく。
「さやかちゃんが? そっか。可愛いね。よく似合ってるよ」
「あ……、ありがとうございます」
女性をストレートに褒められる男性が減ってきているこの時代に、純也さんはどストレートに褒めてくれた。男性にまだ免疫のない愛美は、今にも顔から火を噴きそうな気持になった。
「まあまあ、叔父さまったら。キザなんだから!」
珠莉が呆れているような、面白がっているような(愛美の気のせいかもしれないけれど)口ぶりで、叔父をそう評した。
「さやかちゃん、ヘアメイク上手だね。美容師目指してるのかい?」
「いえ。ウチに小さい妹いるんで、実家ではよく妹の髪やってあげてるんですよ」
さやかは数週間前のチョコレートケーキが効いているのか、まだ会うのが二度目なのにもう純也さんと打ち解けている。
彼女曰く、「チョコ好きに悪い人はいない」らしいのだ。
(いいなぁ……。わたしも二人みたいに、純也さんともっと打ち解けてお話できたらいいのに……)
親戚である珠莉はともかく、さやかまでもがもの怖じせずに純也さんと話せていることが、愛美は羨ましかった。
というか、ロクに男性と話す機会に恵まれなかった、高校入学までの十五年のブランクが恨めしかった。
「――さてと、そろそろ行こうか。ミュージカルは二時開演だから、それまでに昼食を済ませて、ちょっと街をブラブラしよう」
「「はーいっ!」」
純也さんの言葉に、愛美とさやかがまるで小学生みたいに元気よく返事をした。
「……この二人、ホントに高校生かしら?」
珠莉ひとり、呆れてボソッとツッコむ。――彼女には、叔父と愛美たちが「遠足中の小学生とその引率の先生」に見えたのかもしれない。
――それはさておき、四人は駅前のオシャレなカフェでランチを済ませた後、竹下通りを散策し始めた。
「――あっ、ねえねえ! このスマホカバー、可愛くない? 三人おソロで買おうよ! 友情のしるしにさ」
とある雑貨屋さんの店内で、さやかがはしゃいで言った。
「わぁ、ホントだ。可愛い! 買おう買おう♪ ……待って待って。いくらだろ、コレ?」
あまり高価なものだと、愛美は買うのをやめようと思っていた。
所持金は十分にある。〝あしながおじさん〟からクリスマスに送られてきたお小遣いも、さやかのお父さんからお正月にもらったお年玉(中身は一万円だった!)も、短編小説コンテストの賞金もまだ残っているし、そのうえ四月の末にまたお小遣いをもらったばかりだ。
でも金額の問題ではなく、愛美は一年前に金欠を経験してから、節約するようになっていたのだ。〝あしながおじさん〟から援助してもらったお金は、いつか独り立ちできたら全額返そうと決めていたから。
「そんなに高くないよ、コレ。二千円くらい」
「じゃあ買っちゃおっかな」
「私はいいわよ。スマホのカバーなら、高級ブランドのいい品を持ってますから」
「いいじゃん、珠莉。買えば。こんな経験できるの、今のうちだけだぞ」
自慢をまじえて拒もうとする姪に、唯一の男性で大人の純也さんが口を挟んだ。
「大人になってからは、友達とお揃いで何か買うの恥ずかしくなったりするから。今のうちにやっとけば、後々いい思い出になるってモンだ」
純也さんの言い方には、妙な説得力がある。珠莉はピンときた。
「……もしかして、叔父さまにも経験が?」
「そりゃそうだろ。俺にだって、学生時代の思い出くらいあるさ。――あ、そうだ。それ、俺からプレゼントさせてくれないかな?」
「「「えっ?」」」
思いがけない純也さんの提案に、三人の女子高生たちは一同面食らった。
愛美は胸元に控えめのフリルがあしらわれた白のカットソーに、大胆な花柄のミモレ丈のフレアースカート。そこにデニムジャケットを羽織り、靴は赤のハイカットスニーカー。髪形もさやかにアレンジしてもらい、編み込みの入ったハーフアップにしてある。
さやかは白い半袖Tシャツの上に赤のタータンチェックのシャツ、デニムの膝上スカートに黄色の厚底スニーカー。
珠莉は肩の部分に切り込みの入った淡いパープルの七分袖ニットに千鳥格子の膝丈スカート、クリーム色のパンプス。髪には緩くウェーブがかかっている。
「こんにちは、純也さん。今日はお招きありがとうございます」
純也さんにお礼を言った後、愛美は彼の服装に見入っていた。
(わ……! 私服姿の純也さんもカッコいい……!)
愛美の知っている限り、いつもはキチっとしたスーツを着ている彼も、今日は何だかカジュアルな格好をしている。
清潔感のある白無地のカットソーにカーキ色のジャケット、黒のデニムパンツに茶色の編み上げショートブーツ姿だ。
「あら、叔父さま。今日は何だかカジュアルダウンしすぎじゃありません?」
「あのなぁ……。原宿歩くのに、スーツじゃいくら何でも浮くだろ?」
いつもは紳士的な口調の純也さんも、姪の珠莉が相手だと砕けた物言いになるらしい。
「それにしたって、ちょっと若づくりしすぎじゃございません?」
「失礼な。俺はまだ若いっつうの。今日び、三十なんてまだまだ若者だって」
(〝俺〟……? こんな打ち解けた純也さん、初めて見たかも)
愛美は今まで知らなかった純也さんの一面を知り、嬉しくなった。
「愛美ちゃん、今日はいつもと髪形違うね」
「あ、分かっちゃいました? さやかちゃんがやってくれたんですけど、どう……ですか?」
純也さんは女性不信らしいと聞いたけれど、女性のちょっとした変化には気がつくらしい。気づいてもらえた愛美は、さっそくできた彼との会話のキッカケに食らいつく。
「さやかちゃんが? そっか。可愛いね。よく似合ってるよ」
「あ……、ありがとうございます」
女性をストレートに褒められる男性が減ってきているこの時代に、純也さんはどストレートに褒めてくれた。男性にまだ免疫のない愛美は、今にも顔から火を噴きそうな気持になった。
「まあまあ、叔父さまったら。キザなんだから!」
珠莉が呆れているような、面白がっているような(愛美の気のせいかもしれないけれど)口ぶりで、叔父をそう評した。
「さやかちゃん、ヘアメイク上手だね。美容師目指してるのかい?」
「いえ。ウチに小さい妹いるんで、実家ではよく妹の髪やってあげてるんですよ」
さやかは数週間前のチョコレートケーキが効いているのか、まだ会うのが二度目なのにもう純也さんと打ち解けている。
彼女曰く、「チョコ好きに悪い人はいない」らしいのだ。
(いいなぁ……。わたしも二人みたいに、純也さんともっと打ち解けてお話できたらいいのに……)
親戚である珠莉はともかく、さやかまでもがもの怖じせずに純也さんと話せていることが、愛美は羨ましかった。
というか、ロクに男性と話す機会に恵まれなかった、高校入学までの十五年のブランクが恨めしかった。
「――さてと、そろそろ行こうか。ミュージカルは二時開演だから、それまでに昼食を済ませて、ちょっと街をブラブラしよう」
「「はーいっ!」」
純也さんの言葉に、愛美とさやかがまるで小学生みたいに元気よく返事をした。
「……この二人、ホントに高校生かしら?」
珠莉ひとり、呆れてボソッとツッコむ。――彼女には、叔父と愛美たちが「遠足中の小学生とその引率の先生」に見えたのかもしれない。
――それはさておき、四人は駅前のオシャレなカフェでランチを済ませた後、竹下通りを散策し始めた。
「――あっ、ねえねえ! このスマホカバー、可愛くない? 三人おソロで買おうよ! 友情のしるしにさ」
とある雑貨屋さんの店内で、さやかがはしゃいで言った。
「わぁ、ホントだ。可愛い! 買おう買おう♪ ……待って待って。いくらだろ、コレ?」
あまり高価なものだと、愛美は買うのをやめようと思っていた。
所持金は十分にある。〝あしながおじさん〟からクリスマスに送られてきたお小遣いも、さやかのお父さんからお正月にもらったお年玉(中身は一万円だった!)も、短編小説コンテストの賞金もまだ残っているし、そのうえ四月の末にまたお小遣いをもらったばかりだ。
でも金額の問題ではなく、愛美は一年前に金欠を経験してから、節約するようになっていたのだ。〝あしながおじさん〟から援助してもらったお金は、いつか独り立ちできたら全額返そうと決めていたから。
「そんなに高くないよ、コレ。二千円くらい」
「じゃあ買っちゃおっかな」
「私はいいわよ。スマホのカバーなら、高級ブランドのいい品を持ってますから」
「いいじゃん、珠莉。買えば。こんな経験できるの、今のうちだけだぞ」
自慢をまじえて拒もうとする姪に、唯一の男性で大人の純也さんが口を挟んだ。
「大人になってからは、友達とお揃いで何か買うの恥ずかしくなったりするから。今のうちにやっとけば、後々いい思い出になるってモンだ」
純也さんの言い方には、妙な説得力がある。珠莉はピンときた。
「……もしかして、叔父さまにも経験が?」
「そりゃそうだろ。俺にだって、学生時代の思い出くらいあるさ。――あ、そうだ。それ、俺からプレゼントさせてくれないかな?」
「「「えっ?」」」
思いがけない純也さんの提案に、三人の女子高生たちは一同面食らった。



