「……まあ、それは置いておくとして。叔父さまがあんなにご機嫌だったのはきっと、愛美さんのおかげかもしれませんわね」
「えっ? わたし?」
愛美はまたビックリ。珠莉の言う通りだとしたら、一年前も愛美が案内役だったから上機嫌だったということだろうか。
「ええ。愛美さんのこと、すごく気に入ってらっしゃるみたいよ。よかったですわね、愛美さん」
「…………そうなんだ」
愛美はその言葉がまだしっくり来ず、顔の火照りをうまくごまかせない。
(気に入ってるって、どっちの意味だろう? 姪っ子の友達として「あのコはいいコ」って意味? それとも、一人の女の子として……?)
これは、この恋に希望があるということだろうか?
でも、本当に有りうるんだろうか? あのステキなイケメンの(もちろん顔だけじゃないけれど)、しかもセレブの(愛美はそんなこと、別にどうでもいいと思っているけれど)純也さんが、こんな十三歳も年下の普通の女子高生に気があるなんて……!
「ええ、そうなのよ。『また会いたいな』っておっしゃってましたわよ」
「…………」
(珠莉ちゃん、一体どうしちゃったの? なんか今までになく、すごくわたしに協力的になってくれてる)
もちろん珠莉も、さやかと同じく愛美が叔父さんに恋心を抱いていることは知っている。けれど、彼女は今まで、ただ静観しているだけのポジションだった。
(コレって、純也さんと話してたことと何か関係あるのかな……?)
愛美はふとそう思った。確信はないけれど、何となくそう思ったのだ。
珠莉は何か、純也さんの秘密を知っている。それが何なのかはまだ分からないけれど。そして多分、彼女はその秘密を自身の口からは教えてくれないだろう。叔父が自ら打ち明けるまで。
(本人が打ち明けてくれるまで、待つしかないか……)
モヤモヤしながらも、愛美は自分の恋がほんの少しだけ進展を見せかけていることに喜びを感じていた。
****
『拝啓、あしながおじさん。
お元気ですか? わたしは今日も元気です。
今日の放課後、珠莉ちゃんの叔父さんが寮に遊びに来ました。高級パティスリーで買ってきたっていう、チョコレートケーキ1ホールを持って。
チョコスイーツ好きのさやかちゃんはもうそれだけで喜んじゃって、わたしも純也さんが会いに来て下さったのが嬉しくて。そのままわたしたちのお部屋で、四人でお茶会をしようってことになりました。
ケーキは純也さん自らが切り分けて下さって、一人二切れずつ頂きました。
純也さんはわたしが冬に入院してたことを、珠莉ちゃんから聞いてたらしくて。心配して来て下さったそうです。でも、わたしの元気な姿をご覧になって、ホッとされたみたいです。
みんなで色んなお話をしました。っていっても、ほとんどわたしと純也さんばかりお喋りしてたんですけど(笑)
農園でのこと、純也さんの子供の頃のこと、わたしの小説がコンテストで大賞を頂いたこと、そして純也さん自身のこと……。
純也さんは、おじさまのことをご存じみたいです。同じNPO法人で活動されてるっておっしゃってました。おじさまが初めて女の子を援助されることは伺ってたけど、それがわたしのことだと知って驚いたって。こんな偶然ってあるんですね。
そして、純也さんは「楽しかったよ」っておっしゃって、すごく上機嫌で帰っていかれました。
珠莉ちゃんが言うには、「純也叔父さまがあんなにご機嫌なのは愛美さんのおかげ」だそうです。わたし、すごく嬉しくて、ますます彼のことを好きになっちゃいました。
あのね、おじさま。わたし、今日純也さんのおっしゃってたことで、すごく心に残ってる言葉があるんです。それは、「世の中に当たり前のことなんてないんだ」ってことです。
今の日本って、法律で色んな権利が守られてるでしょう? でも、それを当たり前だって思ってちゃいけないんだな、って。一分一秒、自分が生かされてるこの瞬間に感謝しなきゃいけないな、って。
わたしだって、今当たり前に学校に通えてるわけじゃない。両親が亡くなってから、わたしを育ててくれたのは〈わかば園〉のみなさんだし、おじさまがいて下さらなかったら、わたしは高校に入れなかった。だから、純也さんのおっしゃった意味が、わたしにはよく分かるんです。
彼ご自身も、恵まれた境遇に生まれ育ったことを当たり前に思うことなく、私財をなげうって困ってる人たちの支援をなさってます。それって、なかなかできることじゃないですよね。でも、彼はそのことを「当たり前のことをしてるだけだから」ってサラッと言っちゃうんです! すごいと思いませんか?
わたしもいつか、純也さんみたいな人になりたいです。そんなに大げさなことじゃなくていいから、困ってる人を見つけた時、そっと手を差し伸べられるような人になりたいと思ってます。
ごめんなさい、おじさま。なんか純也さんのことばっかり書いてますね。もうこれくらいでペンを置きます。 かしこ
四月 十二日 おじさまのことも大好きな愛美 』
****
「えっ? わたし?」
愛美はまたビックリ。珠莉の言う通りだとしたら、一年前も愛美が案内役だったから上機嫌だったということだろうか。
「ええ。愛美さんのこと、すごく気に入ってらっしゃるみたいよ。よかったですわね、愛美さん」
「…………そうなんだ」
愛美はその言葉がまだしっくり来ず、顔の火照りをうまくごまかせない。
(気に入ってるって、どっちの意味だろう? 姪っ子の友達として「あのコはいいコ」って意味? それとも、一人の女の子として……?)
これは、この恋に希望があるということだろうか?
でも、本当に有りうるんだろうか? あのステキなイケメンの(もちろん顔だけじゃないけれど)、しかもセレブの(愛美はそんなこと、別にどうでもいいと思っているけれど)純也さんが、こんな十三歳も年下の普通の女子高生に気があるなんて……!
「ええ、そうなのよ。『また会いたいな』っておっしゃってましたわよ」
「…………」
(珠莉ちゃん、一体どうしちゃったの? なんか今までになく、すごくわたしに協力的になってくれてる)
もちろん珠莉も、さやかと同じく愛美が叔父さんに恋心を抱いていることは知っている。けれど、彼女は今まで、ただ静観しているだけのポジションだった。
(コレって、純也さんと話してたことと何か関係あるのかな……?)
愛美はふとそう思った。確信はないけれど、何となくそう思ったのだ。
珠莉は何か、純也さんの秘密を知っている。それが何なのかはまだ分からないけれど。そして多分、彼女はその秘密を自身の口からは教えてくれないだろう。叔父が自ら打ち明けるまで。
(本人が打ち明けてくれるまで、待つしかないか……)
モヤモヤしながらも、愛美は自分の恋がほんの少しだけ進展を見せかけていることに喜びを感じていた。
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『拝啓、あしながおじさん。
お元気ですか? わたしは今日も元気です。
今日の放課後、珠莉ちゃんの叔父さんが寮に遊びに来ました。高級パティスリーで買ってきたっていう、チョコレートケーキ1ホールを持って。
チョコスイーツ好きのさやかちゃんはもうそれだけで喜んじゃって、わたしも純也さんが会いに来て下さったのが嬉しくて。そのままわたしたちのお部屋で、四人でお茶会をしようってことになりました。
ケーキは純也さん自らが切り分けて下さって、一人二切れずつ頂きました。
純也さんはわたしが冬に入院してたことを、珠莉ちゃんから聞いてたらしくて。心配して来て下さったそうです。でも、わたしの元気な姿をご覧になって、ホッとされたみたいです。
みんなで色んなお話をしました。っていっても、ほとんどわたしと純也さんばかりお喋りしてたんですけど(笑)
農園でのこと、純也さんの子供の頃のこと、わたしの小説がコンテストで大賞を頂いたこと、そして純也さん自身のこと……。
純也さんは、おじさまのことをご存じみたいです。同じNPO法人で活動されてるっておっしゃってました。おじさまが初めて女の子を援助されることは伺ってたけど、それがわたしのことだと知って驚いたって。こんな偶然ってあるんですね。
そして、純也さんは「楽しかったよ」っておっしゃって、すごく上機嫌で帰っていかれました。
珠莉ちゃんが言うには、「純也叔父さまがあんなにご機嫌なのは愛美さんのおかげ」だそうです。わたし、すごく嬉しくて、ますます彼のことを好きになっちゃいました。
あのね、おじさま。わたし、今日純也さんのおっしゃってたことで、すごく心に残ってる言葉があるんです。それは、「世の中に当たり前のことなんてないんだ」ってことです。
今の日本って、法律で色んな権利が守られてるでしょう? でも、それを当たり前だって思ってちゃいけないんだな、って。一分一秒、自分が生かされてるこの瞬間に感謝しなきゃいけないな、って。
わたしだって、今当たり前に学校に通えてるわけじゃない。両親が亡くなってから、わたしを育ててくれたのは〈わかば園〉のみなさんだし、おじさまがいて下さらなかったら、わたしは高校に入れなかった。だから、純也さんのおっしゃった意味が、わたしにはよく分かるんです。
彼ご自身も、恵まれた境遇に生まれ育ったことを当たり前に思うことなく、私財をなげうって困ってる人たちの支援をなさってます。それって、なかなかできることじゃないですよね。でも、彼はそのことを「当たり前のことをしてるだけだから」ってサラッと言っちゃうんです! すごいと思いませんか?
わたしもいつか、純也さんみたいな人になりたいです。そんなに大げさなことじゃなくていいから、困ってる人を見つけた時、そっと手を差し伸べられるような人になりたいと思ってます。
ごめんなさい、おじさま。なんか純也さんのことばっかり書いてますね。もうこれくらいでペンを置きます。 かしこ
四月 十二日 おじさまのことも大好きな愛美 』
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