「まあまあ、細かいことは気にするな☆ ……ほーい、じゃあみんな、プレゼント配るぞー。サンタのお姉さんも手伝ってな」
「はーい。サンタのお姉さんだよー。みんなよろしくねー」
ミニスカサンタになれた愛美もノリノリである。一人冷静なさやかは、「……ダメだこりゃ」と呆れていた。
ちなみに、用意したプレゼントは百円ショップで買ってきたおもちゃや文房具、手袋や靴下などだ。これまた百円ショップで仕入れてきたラッピング用品で、三人で手分けして可愛くラッピングしてある。
トナカイさやかも一緒に、三人で子供たちにプレゼントを手渡していく。小さい子たちは「わーい、ありがとー」とはしゃぎながら受け取り、大きい子たちは比較的クールに、それでも嬉しそうに受け取っていた。
(……なんか、不思議な気持ち。〈わかば園〉の理事さんたちもきっと、こんな気持ちだったのかな)
子供たちの喜ぶ顔を見ると、自分も嬉しくなる。理事さんたちも、それが嬉しくて援助してくれていたのかな、と愛美は思った。
(きっと、今のあしながおじさんだってそうなんだ)
愛美が自分のおかげで楽しい高校生活を送れているんだと、彼だって思っているに違いない。だから、愛美が困っていたりした時には、色々と手を尽くしてくれるんだろう。
「――みんなー、クリスマスケーキを持ってきたわよー。みんなで分けて食べてねー」
そこへ、大きなケーキの箱を持った秀美さんもやってきた。箱の中身は、白いホイップクリームと真っ赤なイチゴでデコレーションした大きなホールケーキだ。
「わあ、キレイ! 食べるのもったいない。でも美味しそう☆」
「お母さん、ありがと☆ みんなで食べよ♪」
「はーい。じゃあ切り分けるわね。治樹、紙皿とフォーク出してくれる?」
「ほいきた」
秀美さんがケーキを切り分けてくれ――ケーキは実は二つあった――、治樹が出した紙皿に取り分けて、さやかと愛美が二人がかりで子供たちに配って回った。もちろん、三人の分もある。
「じゃあみんな、いただきま~す!」
「「「いただきま~す!」」」
ケーキを食べ始めると、そこはもう大変なことになっていた。
愛美たちお兄さんお姉さんの三人はそうでもないけれど、小さい子たちの食べ方といったらもう。愛美は母性本能をくすぐられた。
「あーあー、クリームでお顔がベタベタだねえ。お姉さんが拭いてあげる」
すぐ隣りに座っている小さな男の子の、クリームまみれになった顔を、愛美はテーブルの上のウェットティッシュでキレイに拭いてあげた。
「愛美、やっぱ手馴れてるね―」
「施設にいた頃、よく小さいコたちにやってあげてたからね。――はい、いいお顔になったよ」
「愛美ちゃん、いいお母さんになりそうだな」
「……いやいや、そんな」
愛美は治樹の言葉を謙遜で返した。
「お兄ちゃん、まだ愛美のこと諦めてないの?」
「……うっさいわ。オレはただ、素直に褒めただけ。なっ、愛美ちゃん?」
「えっ、そうだったんですか?」
愛美が素でキョトンとしたので、さやかが大笑い。
「愛美、さぁいこー! めちゃめちゃ天然じゃんー!」
「……えっ、なにが?」
今まで「天然だ」と言われたことがなかったし、自分でもそう思ったこともなかったので、愛美にはいまいちピンとこない。
「いいのいいの。愛美はもうそのまんまで」
「…………?」
愛美が首を傾げたので、さやかはまた大笑い。治樹もつられて笑い、兄妹二人で大爆笑になったのだった。
* * * *
――新年を迎え、冬休みも終わりに近づいた頃、愛美は一通の手紙を〝あしながおじさん〟に書き送った。一枚の写真を添えて。
****
『拝啓、あしながおじさん。
あけましておめでとうございます。少し遅くなりましたけど、今年もよろしくお願いします。
今年の冬休みは、埼玉県さいたま市のさやかちゃんのお家で楽しく有意義に過ごしました。色々ありすぎて、何から書こうかな。
まず、お家にビックリ。わかば園にいた頃、わたしが空想していたお家にそっくりだったんです。まさか自分があのお家の中に入れるなんて、夢にも思いませんでした! でも今、わたしはこのお家にいます。もうすぐ寮に帰らないといけないのが淋しいです。
そして、ご家族もステキでいい人ばかりです。さやかちゃんのご両親にお祖母さん、早稲田大学三年生で東京で一人暮らし中のお兄さん(治樹さんっていいます)、しょっちゅう脱いだ靴をそろえ忘れる中学一年生の弟の翼君、五歳ですごく可愛い妹の美空ちゃん、そして三毛猫のココちゃん。
ゴハンの時もすごく賑やかだし、みんな楽しい人たちで、すごくあったかい家庭です。わたしも将来結婚したら、こんな家庭を作りたいなって思います。
さやかちゃんのお父さんは作業服メーカーの社長さんで、お家のすぐ近くに工場があります。クリスマスには、その工場の梱包スペースを飾りつけしてクリスマスパーティーをしました。
従業員さんのお子さんたちを招いて、治樹さんがサンタさんのコスプレをして、お子さんたちにプレゼントを配りました。さやかちゃんはトナカイの、わたしもミニスカサンタのコスプレをして、それをお手伝いしました。
何だか不思議な気持ちになりました。きっと、わかば園の理事さんたちもこんな気持ちなのかな、って。もちろん、今わたしを援助して下さってるおじさまも。
「はーい。サンタのお姉さんだよー。みんなよろしくねー」
ミニスカサンタになれた愛美もノリノリである。一人冷静なさやかは、「……ダメだこりゃ」と呆れていた。
ちなみに、用意したプレゼントは百円ショップで買ってきたおもちゃや文房具、手袋や靴下などだ。これまた百円ショップで仕入れてきたラッピング用品で、三人で手分けして可愛くラッピングしてある。
トナカイさやかも一緒に、三人で子供たちにプレゼントを手渡していく。小さい子たちは「わーい、ありがとー」とはしゃぎながら受け取り、大きい子たちは比較的クールに、それでも嬉しそうに受け取っていた。
(……なんか、不思議な気持ち。〈わかば園〉の理事さんたちもきっと、こんな気持ちだったのかな)
子供たちの喜ぶ顔を見ると、自分も嬉しくなる。理事さんたちも、それが嬉しくて援助してくれていたのかな、と愛美は思った。
(きっと、今のあしながおじさんだってそうなんだ)
愛美が自分のおかげで楽しい高校生活を送れているんだと、彼だって思っているに違いない。だから、愛美が困っていたりした時には、色々と手を尽くしてくれるんだろう。
「――みんなー、クリスマスケーキを持ってきたわよー。みんなで分けて食べてねー」
そこへ、大きなケーキの箱を持った秀美さんもやってきた。箱の中身は、白いホイップクリームと真っ赤なイチゴでデコレーションした大きなホールケーキだ。
「わあ、キレイ! 食べるのもったいない。でも美味しそう☆」
「お母さん、ありがと☆ みんなで食べよ♪」
「はーい。じゃあ切り分けるわね。治樹、紙皿とフォーク出してくれる?」
「ほいきた」
秀美さんがケーキを切り分けてくれ――ケーキは実は二つあった――、治樹が出した紙皿に取り分けて、さやかと愛美が二人がかりで子供たちに配って回った。もちろん、三人の分もある。
「じゃあみんな、いただきま~す!」
「「「いただきま~す!」」」
ケーキを食べ始めると、そこはもう大変なことになっていた。
愛美たちお兄さんお姉さんの三人はそうでもないけれど、小さい子たちの食べ方といったらもう。愛美は母性本能をくすぐられた。
「あーあー、クリームでお顔がベタベタだねえ。お姉さんが拭いてあげる」
すぐ隣りに座っている小さな男の子の、クリームまみれになった顔を、愛美はテーブルの上のウェットティッシュでキレイに拭いてあげた。
「愛美、やっぱ手馴れてるね―」
「施設にいた頃、よく小さいコたちにやってあげてたからね。――はい、いいお顔になったよ」
「愛美ちゃん、いいお母さんになりそうだな」
「……いやいや、そんな」
愛美は治樹の言葉を謙遜で返した。
「お兄ちゃん、まだ愛美のこと諦めてないの?」
「……うっさいわ。オレはただ、素直に褒めただけ。なっ、愛美ちゃん?」
「えっ、そうだったんですか?」
愛美が素でキョトンとしたので、さやかが大笑い。
「愛美、さぁいこー! めちゃめちゃ天然じゃんー!」
「……えっ、なにが?」
今まで「天然だ」と言われたことがなかったし、自分でもそう思ったこともなかったので、愛美にはいまいちピンとこない。
「いいのいいの。愛美はもうそのまんまで」
「…………?」
愛美が首を傾げたので、さやかはまた大笑い。治樹もつられて笑い、兄妹二人で大爆笑になったのだった。
* * * *
――新年を迎え、冬休みも終わりに近づいた頃、愛美は一通の手紙を〝あしながおじさん〟に書き送った。一枚の写真を添えて。
****
『拝啓、あしながおじさん。
あけましておめでとうございます。少し遅くなりましたけど、今年もよろしくお願いします。
今年の冬休みは、埼玉県さいたま市のさやかちゃんのお家で楽しく有意義に過ごしました。色々ありすぎて、何から書こうかな。
まず、お家にビックリ。わかば園にいた頃、わたしが空想していたお家にそっくりだったんです。まさか自分があのお家の中に入れるなんて、夢にも思いませんでした! でも今、わたしはこのお家にいます。もうすぐ寮に帰らないといけないのが淋しいです。
そして、ご家族もステキでいい人ばかりです。さやかちゃんのご両親にお祖母さん、早稲田大学三年生で東京で一人暮らし中のお兄さん(治樹さんっていいます)、しょっちゅう脱いだ靴をそろえ忘れる中学一年生の弟の翼君、五歳ですごく可愛い妹の美空ちゃん、そして三毛猫のココちゃん。
ゴハンの時もすごく賑やかだし、みんな楽しい人たちで、すごくあったかい家庭です。わたしも将来結婚したら、こんな家庭を作りたいなって思います。
さやかちゃんのお父さんは作業服メーカーの社長さんで、お家のすぐ近くに工場があります。クリスマスには、その工場の梱包スペースを飾りつけしてクリスマスパーティーをしました。
従業員さんのお子さんたちを招いて、治樹さんがサンタさんのコスプレをして、お子さんたちにプレゼントを配りました。さやかちゃんはトナカイの、わたしもミニスカサンタのコスプレをして、それをお手伝いしました。
何だか不思議な気持ちになりました。きっと、わかば園の理事さんたちもこんな気持ちなのかな、って。もちろん、今わたしを援助して下さってるおじさまも。



