「……なんだ、わたしと同じだったんだね。実はわたしも、ジュディと自分を重ねてたの。あなたが茗倫女子に進学させてくれるって分かったあの日まで、『こんなこと、自分に起こるわけないよなぁ』って思ってたんだ。こんなの、物語の中だけの話だって」
「そうか……。まあ、現実にあのとおりのことが起こるなんて思わないよな」
そう、純也さんが学校を訪ねて来るまでは、愛美もただの偶然だと思っていたのだ。
「ところで、俺からも一つ、君に訊きたいことがあるんだけど、いいかな?」
「うん。なに?」
「ジュディは〝あしながおじさん〟のことを老紳士だと思ってたのに、君は最初から若いって信じて疑わなかったろ? あれはどうして?」
確かに、物語の中でジュディは、最後の最後まで〝あしながおじさん〟のことを老紳士だと思っていた。ジャービスの家で、彼が正体を明かすまでは。
「それはね、初めてあなたのシルエットを目にした時に、『あれ? この人、まだ若いんじゃない?』って思ったからだよ。だからずっと、『〝あしながおじさん〟は若い人なんだ』って思ってきたの。純也さんがその正体だって分かった時、『ああ、やっぱり』って思った。っていうか、何となくは正体にも気づいてたんだけどね」
それは、愛美が小さい頃から『あしながおじさん』の物語を読み込んでいたからかもしれない。だから自然と、純也さんのことをジャービスと重ね合わせて「この人が〝あしながおじさん〟なんだ」と思ったのだろう。
「それに、純也さんがウッカリしすぎてたせいでもあるんだよ。うまく正体を隠してたつもりでも、しょっちゅうボロ出しまくってたから。自覚ないでしょ?」
「あれ? 俺、そんなにボロ出しまくってたかな……」
「ほらね、やっぱり自覚ないじゃない」
純也さんが頭をポリポリ掻くのを見て、愛美は愉快そうに笑った。
「そういえば、久留島さんってすごくいい人だね。わたしもあの人には感謝しかないよ。表立って動けないあなたの代わりに、わたしのために色々してくれて。ジュディは秘書のグリグスさんのことを嫌ってたけど、わたしは久留島さんのことキライになれないな」
多分、ジュディもただグリグスさんのことを誤解していただけで、彼もいい人だったんだろう。あの物語の後、誤解は解けたんだろうか?
「ああ、久留島さんは俺の父親代わりみたいな人だからね。母同様、父にもいい感情は抱いてこなかったから。彼がいてくれなかったら俺の仕事は回らないし、心の支えでもあるんだ。色々と相談にも乗ってもらったりしてるし」
「それは、純也さんの人柄がいいからだと思うよ。あなたが純粋に困ってる人を助けたいって思ってるから、あの人もそれを応援してくれてるんだよ。わたしの件だってそうだったんじゃない? あの人はイヤな顔をすることなく、喜んで協力してくれたんじゃないかな?」
「君の言うとおりだよ。彼は俺が『協力してほしい』って頼んだ時、二つ返事で引き受けてくれた。『純也様のために、私ができることなら何でもお手伝い致しますよ』って言ってくれてね。嬉しかったなぁ。……色々と無茶なことも頼んでしまったけど、彼は一度も嫌な顔を見せたことがなかったよ。彼には本当に感謝してる」
「そうなんだ……。純也さんと久留島さんとの間には、しっかりした信頼関係があるんだね」
久留島さんが純也さんの頼みごとを快く引き受けてくれるのは、純也さんが彼への感謝の気持ちをいつも忘れずにいるからだろうと愛美は思った。
「そうか……。まあ、現実にあのとおりのことが起こるなんて思わないよな」
そう、純也さんが学校を訪ねて来るまでは、愛美もただの偶然だと思っていたのだ。
「ところで、俺からも一つ、君に訊きたいことがあるんだけど、いいかな?」
「うん。なに?」
「ジュディは〝あしながおじさん〟のことを老紳士だと思ってたのに、君は最初から若いって信じて疑わなかったろ? あれはどうして?」
確かに、物語の中でジュディは、最後の最後まで〝あしながおじさん〟のことを老紳士だと思っていた。ジャービスの家で、彼が正体を明かすまでは。
「それはね、初めてあなたのシルエットを目にした時に、『あれ? この人、まだ若いんじゃない?』って思ったからだよ。だからずっと、『〝あしながおじさん〟は若い人なんだ』って思ってきたの。純也さんがその正体だって分かった時、『ああ、やっぱり』って思った。っていうか、何となくは正体にも気づいてたんだけどね」
それは、愛美が小さい頃から『あしながおじさん』の物語を読み込んでいたからかもしれない。だから自然と、純也さんのことをジャービスと重ね合わせて「この人が〝あしながおじさん〟なんだ」と思ったのだろう。
「それに、純也さんがウッカリしすぎてたせいでもあるんだよ。うまく正体を隠してたつもりでも、しょっちゅうボロ出しまくってたから。自覚ないでしょ?」
「あれ? 俺、そんなにボロ出しまくってたかな……」
「ほらね、やっぱり自覚ないじゃない」
純也さんが頭をポリポリ掻くのを見て、愛美は愉快そうに笑った。
「そういえば、久留島さんってすごくいい人だね。わたしもあの人には感謝しかないよ。表立って動けないあなたの代わりに、わたしのために色々してくれて。ジュディは秘書のグリグスさんのことを嫌ってたけど、わたしは久留島さんのことキライになれないな」
多分、ジュディもただグリグスさんのことを誤解していただけで、彼もいい人だったんだろう。あの物語の後、誤解は解けたんだろうか?
「ああ、久留島さんは俺の父親代わりみたいな人だからね。母同様、父にもいい感情は抱いてこなかったから。彼がいてくれなかったら俺の仕事は回らないし、心の支えでもあるんだ。色々と相談にも乗ってもらったりしてるし」
「それは、純也さんの人柄がいいからだと思うよ。あなたが純粋に困ってる人を助けたいって思ってるから、あの人もそれを応援してくれてるんだよ。わたしの件だってそうだったんじゃない? あの人はイヤな顔をすることなく、喜んで協力してくれたんじゃないかな?」
「君の言うとおりだよ。彼は俺が『協力してほしい』って頼んだ時、二つ返事で引き受けてくれた。『純也様のために、私ができることなら何でもお手伝い致しますよ』って言ってくれてね。嬉しかったなぁ。……色々と無茶なことも頼んでしまったけど、彼は一度も嫌な顔を見せたことがなかったよ。彼には本当に感謝してる」
「そうなんだ……。純也さんと久留島さんとの間には、しっかりした信頼関係があるんだね」
久留島さんが純也さんの頼みごとを快く引き受けてくれるのは、純也さんが彼への感謝の気持ちをいつも忘れずにいるからだろうと愛美は思った。



