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「――ええっ!? 純也さんからのプロポーズ、断っちゃったの!? なんでよ!?」
その日の夜、寮の部屋で純也さんに「結婚できない」と伝えたことを打ち明けた愛美に、さやかが食ってかかった。
「なんで断っちゃったのかなぁって、わたしも後悔してるんだよ……」
「ということは、お断りしたのはあなたの本心ではなかった、ということね?」
うなだれる愛美に、珠莉がそうフォローを入れた。
「うん、多分……。でも、自分でもよく分かんなくて。ただね、断ったのは、わたしの中にまだ何か引っかかってることがあるからだとは思ってるんだけど」
「それが何なのか、自分でも分かってない感じ?」
「うん」
「そっか……」
純也さんと別れた後、彼からは何の連絡も来ていない。彼の方だって、どうして断られたのか納得はいっていないはずなのに。
「でも、純也さんと別れることにしたわけじゃないから。これからもお付き合いは続いていくし、援助してもらった金額だって今日返した分だけじゃまだ足りてないから、これからも少しずつ返していくつもり。まずは、彼と対等な立場になれないと、結婚だって難しいんじゃないかと思うから」
「結局それなんじゃないの? 愛美が結婚をためらってる理由って」
「……う~ん、そうかも」
いくら法律上は成人でもう大人だといっても、経済的にはまだ自立できていない以上は自分の中で〝大人〟になり切れていないのではないか、と思っているのかもしれない。
「だったら、どうしてそれを正直に話さなかったのさ? それがアンタの本心なんでしょ?」
「プライドがジャマして言えなかったの。なんか、結局はお金目当てで好きになったみたいだと思っちゃったから。でも、次に彼と会った時には正直に話そうと思う」
「それがいいよ。正直になりな」
「そうよ、愛美さん。叔父さまだって、あなたの正直な気持ちをお知りになりたいはずだもの」
「そう……だね」
親友二人に背中を押され、愛美は純也さんに今度こそ自分の正直な気持ちを打ち明けようと心に決めたのだった。
* * * *
――それから数日後。愛美に一通の手紙が届いた。
「…………えっ!? 純也さんからだ。珍しい」
差出人の名前に〝辺唐院純也〟とあるのを見て、愛美は目を丸くした。彼とは今まで電話かメッセージアプリでしか連絡を取り合っていなかったので、彼から手紙が届いたのは初めてのことだった。
「一体、何が書いてあるんだろう……?」
一日の講義をすべて受け終え、部屋に戻った愛美は、ドキドキしながら開封して便箋を開いた。



