――五人は応接室へと移動し、そこで三人の女の子たちはプレゼントを渡すことになった。
「まあ、治樹さん! ようこそいらっしゃいましたわ!」
珠莉は好きな人を、叔父以上に熱烈歓迎した。
「あ、珠莉ちゃん。やっほー♪ つうか、これって今どういう状況?」
「あたしが説明するよ、お兄ちゃん。純也さんは愛美に会いにきた。ついでにあたしたちにもチョコくれた。で、お兄ちゃんには珠莉のために来てもらったの。そして可愛い妹のためにもね。以上」
また純也さんとバチバチになりそうな兄に、さやかが説明した。
「というわけで、治樹さん。これを……。手作りのチョコレートとマフラーです。マフラーは初めて編んだので、あまり自信がないんですけど……」
「あ……ありがとう。オレのために一生懸命編んでくれたんだよね? 嬉しいよ」
「それで……その、私とお付き合いして下さいませんか? 私、治樹さんのことが……」
「うん、オレも好きだよ」
「……えっ!?」
(あらら、なんか二人、いい感じ……)
何だか新たなカップルが誕生しそうな予感に愛美も嬉しくなり、今度は自分の番だと純也さんの袖先を掴む。
「純也さん、これ。――さっき珠莉ちゃんがバラしちゃったからもう言っちゃうけど、チョコと手編みのマフラー」
「ありがとう。……で、チョコの味は?」
「保証つき。三人でちゃんと試食もしたから」
「そっか、よかった。――で、こっちの包みがマフラーか。開けていいかな?」
「うん、どうぞ」
純也さんが丁寧に包装を解くのを、愛美はドキドキしながら見ていた。……この色、彼は気に入ってくれるかな……?
「……ああ、いい色だ。俺の好きなブルーだね。それに編み方も凝ってるな。愛美ちゃん、編み物得意だったんだ?」
「うん。冬休みのデートの時、焦げ茶色のカシミヤのマフラーが気に入ってないみたいだったから。それで編んであげたくなったの。で、どうせならと思って二人も巻き込んで」
「はは、愛美ちゃんらしいな。……ね、頼みがあるんだ。マフラー、君が俺に巻いてくれないかな?」
「うん、いいよ」
二人はソファーに座り、愛美はそこで彼にマフラーを巻いてあげた。
「ありがとう。あったかいよ」
「よかった、喜んでもらえて。頑張って編んだ甲斐があったよ。……あ、そうだ」
愛美は晴美さんに預けてあったもう一つの紙袋を純也さんに手渡した。
「……これは?」
「田中さんの秘書さんの分。チョコは今日渡せないとムダになっちゃうから、マフラーだけにしたんだけど。純也さんから田中さんに渡しておいてもらえないかな? 中に田中さん宛ての手紙も入ってるから」
「それは……別に構わないけど。どうして俺に?」
「純也さんに預けてれば、確実に久留島さんに渡してもらえると思ったから。……ダメかな?」
この理屈はかなりこじつけっぽいけれど、愛美にとってはちゃんと筋が通っているのだ。
「…………分かった。預かっとくよ」
「よかった! ありがとう! じゃあお願いします」
愛美は安心して、贈り物を純也さんに託した。
(純也さんが久留島さんに渡さないわけがないんだよね。だって、彼の秘書なんだから)
「……あ、ホワイトデーに何かお返ししないとね」
「ううん、お返しは要らないよ。今日もらったチョコだけで充分」
「そっか」
――そうして、愛美にとって初めてのバレンタインデーは、珠莉と治樹という新たなカップルの誕生とともに幕を下ろした。
そしてさやかは兄にチョコとマフラーを渡し、「お前には本命の男はいないのか」とツッコまれ、「うっさいわ」といつものように兄妹漫才を繰り広げていた。
――この日、愛美が〝あしながおじさん〟に宛てた手紙にはこんなことが書かれていた。
****
『拝啓、あしながおじさん。
今日はバレンタインデーです。わたしは純也さんに、珠莉ちゃんは治樹さんに、さやかちゃんも本命がいないので仕方なく(笑)お兄さんに手作りチョコと手編みのマフラーを渡すことにしました。
珠莉ちゃんはその時、治樹さんに告白するみたい。この手紙を書いてる今はどうなるか分からないけど、上手くいってほしいな……。
残念ながら、おじさまの分は用意してません。ゴメンなさい! 純也さんから、おじさまはわたしからの見返りなんて求めてないだろうから用意する必要ない、って言われたから。ホントに欲しくないんですね? 後から「ホントは欲しかったのに」ってすねられても知らないから。
それはともかく、わたしはおじさまの分の代わりに秘書の久留島さんの分の贈り物を用意しました。中身は手編みのマフラー。色はグレーにしました。純也さんに預けたので、ちゃんと久留島さんが受け取ってくれますように……。
来週は学年末テストで、四月からわたしたちは最終学年の三年生になります。でも、クラスも寮の部屋割りも持ち上がりになるので、また三人一緒です!
わたしも文芸部の部長になるし、作家としていよいよ本も出版されるので、もっともっと頑張らないと!
ではまた。ハッピーバレンタイン♪ かしこ
二月十四日 チョコはないけど、おじさまのことが大好きな愛美』
****
「まあ、治樹さん! ようこそいらっしゃいましたわ!」
珠莉は好きな人を、叔父以上に熱烈歓迎した。
「あ、珠莉ちゃん。やっほー♪ つうか、これって今どういう状況?」
「あたしが説明するよ、お兄ちゃん。純也さんは愛美に会いにきた。ついでにあたしたちにもチョコくれた。で、お兄ちゃんには珠莉のために来てもらったの。そして可愛い妹のためにもね。以上」
また純也さんとバチバチになりそうな兄に、さやかが説明した。
「というわけで、治樹さん。これを……。手作りのチョコレートとマフラーです。マフラーは初めて編んだので、あまり自信がないんですけど……」
「あ……ありがとう。オレのために一生懸命編んでくれたんだよね? 嬉しいよ」
「それで……その、私とお付き合いして下さいませんか? 私、治樹さんのことが……」
「うん、オレも好きだよ」
「……えっ!?」
(あらら、なんか二人、いい感じ……)
何だか新たなカップルが誕生しそうな予感に愛美も嬉しくなり、今度は自分の番だと純也さんの袖先を掴む。
「純也さん、これ。――さっき珠莉ちゃんがバラしちゃったからもう言っちゃうけど、チョコと手編みのマフラー」
「ありがとう。……で、チョコの味は?」
「保証つき。三人でちゃんと試食もしたから」
「そっか、よかった。――で、こっちの包みがマフラーか。開けていいかな?」
「うん、どうぞ」
純也さんが丁寧に包装を解くのを、愛美はドキドキしながら見ていた。……この色、彼は気に入ってくれるかな……?
「……ああ、いい色だ。俺の好きなブルーだね。それに編み方も凝ってるな。愛美ちゃん、編み物得意だったんだ?」
「うん。冬休みのデートの時、焦げ茶色のカシミヤのマフラーが気に入ってないみたいだったから。それで編んであげたくなったの。で、どうせならと思って二人も巻き込んで」
「はは、愛美ちゃんらしいな。……ね、頼みがあるんだ。マフラー、君が俺に巻いてくれないかな?」
「うん、いいよ」
二人はソファーに座り、愛美はそこで彼にマフラーを巻いてあげた。
「ありがとう。あったかいよ」
「よかった、喜んでもらえて。頑張って編んだ甲斐があったよ。……あ、そうだ」
愛美は晴美さんに預けてあったもう一つの紙袋を純也さんに手渡した。
「……これは?」
「田中さんの秘書さんの分。チョコは今日渡せないとムダになっちゃうから、マフラーだけにしたんだけど。純也さんから田中さんに渡しておいてもらえないかな? 中に田中さん宛ての手紙も入ってるから」
「それは……別に構わないけど。どうして俺に?」
「純也さんに預けてれば、確実に久留島さんに渡してもらえると思ったから。……ダメかな?」
この理屈はかなりこじつけっぽいけれど、愛美にとってはちゃんと筋が通っているのだ。
「…………分かった。預かっとくよ」
「よかった! ありがとう! じゃあお願いします」
愛美は安心して、贈り物を純也さんに託した。
(純也さんが久留島さんに渡さないわけがないんだよね。だって、彼の秘書なんだから)
「……あ、ホワイトデーに何かお返ししないとね」
「ううん、お返しは要らないよ。今日もらったチョコだけで充分」
「そっか」
――そうして、愛美にとって初めてのバレンタインデーは、珠莉と治樹という新たなカップルの誕生とともに幕を下ろした。
そしてさやかは兄にチョコとマフラーを渡し、「お前には本命の男はいないのか」とツッコまれ、「うっさいわ」といつものように兄妹漫才を繰り広げていた。
――この日、愛美が〝あしながおじさん〟に宛てた手紙にはこんなことが書かれていた。
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『拝啓、あしながおじさん。
今日はバレンタインデーです。わたしは純也さんに、珠莉ちゃんは治樹さんに、さやかちゃんも本命がいないので仕方なく(笑)お兄さんに手作りチョコと手編みのマフラーを渡すことにしました。
珠莉ちゃんはその時、治樹さんに告白するみたい。この手紙を書いてる今はどうなるか分からないけど、上手くいってほしいな……。
残念ながら、おじさまの分は用意してません。ゴメンなさい! 純也さんから、おじさまはわたしからの見返りなんて求めてないだろうから用意する必要ない、って言われたから。ホントに欲しくないんですね? 後から「ホントは欲しかったのに」ってすねられても知らないから。
それはともかく、わたしはおじさまの分の代わりに秘書の久留島さんの分の贈り物を用意しました。中身は手編みのマフラー。色はグレーにしました。純也さんに預けたので、ちゃんと久留島さんが受け取ってくれますように……。
来週は学年末テストで、四月からわたしたちは最終学年の三年生になります。でも、クラスも寮の部屋割りも持ち上がりになるので、また三人一緒です!
わたしも文芸部の部長になるし、作家としていよいよ本も出版されるので、もっともっと頑張らないと!
ではまた。ハッピーバレンタイン♪ かしこ
二月十四日 チョコはないけど、おじさまのことが大好きな愛美』
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