愛美自身も、あの頃はまだ亡くなった両親から愛されていたかどうか自信がなかったので、純也さんに言われた言葉で救われたのだ。今は自分が確かに両親から愛されていたんだと思えるし、両親の愛に報いるような生き方をしようとも思える。
「あれがキッカケで……? 俺はごく普通のことしか言ってなかったつもりだったんだけどな」
「ううん。わたし、あの時までは誰かからそんなふうに言われたこと、あんまりなかったから嬉しかったの。だからだと思う。純也さんのこと、すごく好きになったのは。……だから、ありがとう」
「そう……だったのか」
「うん。そうだったんだよ」
そして彼は、色々な場面で愛美のことを気にかけてくれている。インフルエンザで入院生活を余儀なくされた時には、お見舞いにキレイなフラワーボックスを送ってくれた。心のこもった手書きのメッセージカードを添えて。あんなに失礼極まりない手紙を書き送ったにも関わらず。
それはあくまで〝あしながおじさん〟としてしてくれたことで、愛美もその頃はまだ彼がしてくれたんだとは知らなかったけれど。
でも、愛美はまだ純也さんに「あなたが〝あしながおじさん〟でしょう」と追及するつもりはない。なぜなら、愛美のことを欺き続けていることにいちばん良心の呵責をおぼえているのは誰でもない彼自身だと分かっているから、彼の方から本当のことを打ち明けてくれるまで待っていることに決めたのだ。
(気づかないフリをするのもまた、一つの勇気なんだよね……)
「――俺が愛美ちゃんを好きになった理由は、前にも話したよな。君は俺のことを家柄とかステータスでじゃなくて、一人の人間として、一人の男としてちゃんと見てくれてるから。それまで出会ってきたどんな女性とも違うと思った。それで珠莉と同い年の、十三歳も歳下の女の子だと頭では分かってても好きだっていう気持ちは止められなかったんだ」
「うん」
だから彼は、ヌン活の時にあんなことを言ったのか。あれはきっと、愛美に言っているようで自分自身にも言い聞かせていたんだろう。
「純也さん、わたしとの年の差のことは気にしなくていいよ。わたし、四月で十八歳になるの。つまり、法律上は成人ってことだから、付き合ってても何の問題もなくなるんだよ」
「ああ……、そっか。う~ん、でも法律上は問題なくなっても、珠莉がどう思ってるかな……」
「珠莉ちゃんのことなら気にしないで。今はわたしと純也さんの仲を応援してくれてるから。好きな人できたから、純也さんのこと気にしてないと思うし」
「えっ、アイツに好きな男ができた!? どんなヤツか、愛美ちゃんは知ってるのか?」
愛美の思いがけない発言に、純也さんは「初耳だ」とばかりに目を丸くした。
「知ってるよ。そして多分、純也さんも知ってる人」
「俺も知ってる……っていうと、もしかして、さやかちゃんのお兄さんとか? まさかなー」
「うん、そのまさか」
「ウソっ!? マぁジでー!?」
純也さんのリアクションは、今どきの若者らしいものだった。けれど、三十歳にしては若すぎる気がしなくもない。
「まだお付き合いはしてないみたいだけど、連絡先は交換してやり取りはしてるみたいだよ」
「まだ付き合ってはいないのか。でも、珠莉にもそういう相手ができたんだな。ちょっと安心した」
「純也さん、叔父さんの顔になってる」
久しぶりに彼のそういう表情を見て、愛美は笑った。
――話しているうちに、外の夕焼けが濃くなっていた。ラベンダー色に染まった二人は何だかロマンチックだ。
その雰囲気に後押しされるように、二人は自然と唇を重ねていた。キスをしたのは夏以来だと思う。
「愛美ちゃん、今日は楽しかった?」
「うん、すごく楽しかったよ」
「よかった。じゃあ、そろそろ帰ろうか。――また二人でどこかに出かけようね」
「うん!」
――二人は手を繋ぎ、エレベーターに乗ってスカイツリーの外へ。愛美ももう、周りの目なんか気にしなかった。
「……あ、そういや今日はソラマチまで回れなかったな。次の機会にしようか」
「そうだね。わたしが東京にいる間にまた来よう」
愛美の冬休みはまだ始まったばかり。あと十日以上もあるのだから、また来る機会はあるだろう。
「あれがキッカケで……? 俺はごく普通のことしか言ってなかったつもりだったんだけどな」
「ううん。わたし、あの時までは誰かからそんなふうに言われたこと、あんまりなかったから嬉しかったの。だからだと思う。純也さんのこと、すごく好きになったのは。……だから、ありがとう」
「そう……だったのか」
「うん。そうだったんだよ」
そして彼は、色々な場面で愛美のことを気にかけてくれている。インフルエンザで入院生活を余儀なくされた時には、お見舞いにキレイなフラワーボックスを送ってくれた。心のこもった手書きのメッセージカードを添えて。あんなに失礼極まりない手紙を書き送ったにも関わらず。
それはあくまで〝あしながおじさん〟としてしてくれたことで、愛美もその頃はまだ彼がしてくれたんだとは知らなかったけれど。
でも、愛美はまだ純也さんに「あなたが〝あしながおじさん〟でしょう」と追及するつもりはない。なぜなら、愛美のことを欺き続けていることにいちばん良心の呵責をおぼえているのは誰でもない彼自身だと分かっているから、彼の方から本当のことを打ち明けてくれるまで待っていることに決めたのだ。
(気づかないフリをするのもまた、一つの勇気なんだよね……)
「――俺が愛美ちゃんを好きになった理由は、前にも話したよな。君は俺のことを家柄とかステータスでじゃなくて、一人の人間として、一人の男としてちゃんと見てくれてるから。それまで出会ってきたどんな女性とも違うと思った。それで珠莉と同い年の、十三歳も歳下の女の子だと頭では分かってても好きだっていう気持ちは止められなかったんだ」
「うん」
だから彼は、ヌン活の時にあんなことを言ったのか。あれはきっと、愛美に言っているようで自分自身にも言い聞かせていたんだろう。
「純也さん、わたしとの年の差のことは気にしなくていいよ。わたし、四月で十八歳になるの。つまり、法律上は成人ってことだから、付き合ってても何の問題もなくなるんだよ」
「ああ……、そっか。う~ん、でも法律上は問題なくなっても、珠莉がどう思ってるかな……」
「珠莉ちゃんのことなら気にしないで。今はわたしと純也さんの仲を応援してくれてるから。好きな人できたから、純也さんのこと気にしてないと思うし」
「えっ、アイツに好きな男ができた!? どんなヤツか、愛美ちゃんは知ってるのか?」
愛美の思いがけない発言に、純也さんは「初耳だ」とばかりに目を丸くした。
「知ってるよ。そして多分、純也さんも知ってる人」
「俺も知ってる……っていうと、もしかして、さやかちゃんのお兄さんとか? まさかなー」
「うん、そのまさか」
「ウソっ!? マぁジでー!?」
純也さんのリアクションは、今どきの若者らしいものだった。けれど、三十歳にしては若すぎる気がしなくもない。
「まだお付き合いはしてないみたいだけど、連絡先は交換してやり取りはしてるみたいだよ」
「まだ付き合ってはいないのか。でも、珠莉にもそういう相手ができたんだな。ちょっと安心した」
「純也さん、叔父さんの顔になってる」
久しぶりに彼のそういう表情を見て、愛美は笑った。
――話しているうちに、外の夕焼けが濃くなっていた。ラベンダー色に染まった二人は何だかロマンチックだ。
その雰囲気に後押しされるように、二人は自然と唇を重ねていた。キスをしたのは夏以来だと思う。
「愛美ちゃん、今日は楽しかった?」
「うん、すごく楽しかったよ」
「よかった。じゃあ、そろそろ帰ろうか。――また二人でどこかに出かけようね」
「うん!」
――二人は手を繋ぎ、エレベーターに乗ってスカイツリーの外へ。愛美ももう、周りの目なんか気にしなかった。
「……あ、そういや今日はソラマチまで回れなかったな。次の機会にしようか」
「そうだね。わたしが東京にいる間にまた来よう」
愛美の冬休みはまだ始まったばかり。あと十日以上もあるのだから、また来る機会はあるだろう。



