「すみません、ただ車見てただけです」

「そう?ならいいけど…」


と言いながらも、何か言いたそうなこの人。

ハッキリ言ってくれればいいのに。


「君、名前は?」

「え?あ、水瀬舞(みなせ まい)です」

「舞ちゃんね。俺は、門月裕也(とつき ゆうや)」

「裕也さん…?」


どこかで聞いたことあるような気もするけど、気のせいだよね。

私の周りに、こんな優しい人なんていないから知り合いでもないだろうし。


「ちょっとついてきて」

「へ?」


いきなり腕を掴んで、私が行きたい方向とは真逆に歩き出した。

意味がわからない…


どうしてこんなことになるの?

この人はいったい何がしたいわけ?


まぁ、私の人生どうでもいいし…

どうなったっていいんだけど。


でも少し、怖いと感じている。