ここには何回も来た。




まだ見慣れない大きな扉を通り部屋の中に入れてもらう。




「……で、何があったか最初から教えてくれるか?」




少し気まずそうに口を開いた詩さんに申し訳なく思いながら私は話し出す。




「あの人達は私の両親なんです」




「両親?」




「はい、あの人達はお金が大好きで私と兄の事なんか見てくれなくてそれが嫌になったのか兄は家を出て行ったんです。それから、両親は私に手をあげるようになって」



私が話す時、詩さんは静かに聞いてくれていた。




「おじいちゃんが見かねて引き取ってくれたんです。だけど、その時おじいちゃんまだ現役で私に格闘の才能がないからとよく殴られました。だけど、それから私が実力をつけると同時におじいちゃんが引退したので丸くなったんです」




「なんだよそれ……」




大まかの事を伝えると詩さんはピキピキと顔に血管が浮き上がるほど怒っていた。




もしかしたら詩さんは私の為に怒ってくれているのだろうか?とそんな自意識過剰な考えが頭によぎったがすぐに忘れる。



「悪かった、もっとちゃんと親身になってお前の話を聞いていたら会わせる事なんてしなかったのに……」




いや、詩さんは何一つ悪くない……



 
「詩さんは何も悪くありません。悪いのは私ですから」




本当に悪いのは私。だから詩さんが私に謝る事なんて一ミリもない。




「……」




私が思っている事をそのまま伝えると詩さんは口をつぐんでしまった。