殴られる……っ




そう思い身構えたがその拳が私に当たる事はなかった。




「おい、おっさん何してんだよ」




えっ……?




拳が私に当たらない事にも驚いたが何より驚いたのは詩さんが庇ってくれていた事。




父の右手首をしっかりと掴み私に振り下ろされるはずだった拳を掴んでいる。




「はっお前こそ誰だよ、これは家族の問題だ部外者が口挟むなよ」




「そうよそうよっ」




この二人は知らないのだろう。この人がこの屋敷の息子だという事を。




「お前ら、死にたくなければ今すぐ失せろ」




詩さんは怪訝そうに眉をひそめて睨んでいる。




その顔は私が初めて詩さんと会った日のあの部屋の時の顔よりも怖かった。




それには流石の父も恐怖したのが「ひっ」と声を漏らしながら足早に屋敷を出て行った。




良かった……っ




あの人達の姿が見えなくなると緊張の糸が切れ、ヘナヘナとその場に座り込む。




「大丈夫かっ?」





私が急に座り込んだからか、詩さんは焦ったように駆け寄ってきてくれる。




「はい、大丈夫です……すみませんでした……」




私が守られてどうするのよ……





「……ちょっと俺の部屋来い」




えっ?どうしてだろう?





詩さんなりに何か思う事があったのだろう。もしかしたら説教かもしれないが。




助けてもらったのに逃げるわけにはいかない。




「わかりました……」




私はなんとか立ち上がり詩さんの後ろをついていく。