「何、しに来たんですか……?」



私の前でニコニコ笑いながら近寄ってくる両親に私はジリジリと後ろに下がる。




「何って、ここで暮らしていると知ってちょっとお金を借りようと思ってね」




「こんなにいい所に住んでるんだから金、あるだろ?」




……っこの人達、何も変わっていない……




「無理です……私は、ここで働かせてもらっている、だけなので……」




両親に殴られた時の記憶が今流れ込んでくる。




無意識に体が強張るし言葉もうまく繋がらない。





「はぁ?あるでしょお金」





「何?俺達に渡す金はねぇってか?それが親に取る態度か?」




やめて……っもう私は、あなた達の物じゃないっ





逃げ出したいのに足が言う事を聞かないっ




「本当に、無理なものは無理なんです……っ」




今にも泣き出してしまいそうだ。




怖くて怖くて目の前にいる人達の顔を見ることすらできない。



「はぁ、やっぱりお前はダメだな」




「莉斗だけで良かったのにこんな子産まなきゃ良かった」




……っ私はいらない子?




ずっと私の事を好きとは言ってくれなかったが嫌いではないんじゃないかと心のどこかで思っていた。




だが、どうやら違ったみたいだ。




「いいから早く出せって」




頑なにお金を渡さない私を見てイラッとしたのだろう。




拳を作り私に振り上げるのがチラリと見えた。




またあの頃に戻るのか……



ここに来て変われたと思った。任務以外はびびってたけど、それでもちゃんと遂行していたから今がある。




でも、それ以外はからっきしだから。いつかはこうやってまた戻ってしまうのではないかと思っていた。





私は硬く目を瞑り服の上から詩さんのくれたらネックレスを掴む。




もうあの楽しい日々に戻れないとしても楽しかったのに変わりはない。




こうやってちゃんと私には形ある思い出もあるんだから。