「おー詩の拘束を抜け出すとすごいね」




さっきまで詩さんに向けられていた視線が私に向き、反応に遅れる。




「あ、えと……ちょっとした隙に逃げ出したというか……」




誰かに自分の行動を伝えるなど今までやった事があるはずもなく、どう伝えたらいいのかわからない。





私の語彙力の無さに呆れる……





「そんな事別にいいだろ、それより俺らもう帰るから」





私が男の人と喋っていると中に割って入りそのまま私の手を掴み歩き出そうしていた。





ち、ちょっとっ……どうしていつもいつも私を拘束しようとするのよっ





強引に腕を引かれ、私と詩さんの体格差。力ずくで止める事は簡単だが私は詩さんの護衛をしなければならないのに、守るべき者を傷つけるなど言語道断。





だからいつもついていくしかない。





まぁスリーパーホールドされるよりはましだよね……




私はされるがままに詩さんの後ろに続く。




「僕達、今からパンケーキ食べに行くんだけど来ない?男だけだと入りにくしいさ」




さっきの男の人に背を向けて歩いていたら私達に聞こえるように少し声を張り上げながらそう言った。





ん?パンケーキ?





私は男の人の言っていたパンケーキと言う言葉にピクっと反応した。





男だけだと入りにくいって事は私の事も誘ってくれてるのかな?




パンケーキは食べた事がない。だからずっと食べたいと思っていた。




それに、一度は食べてみたいと思っていた食べ物ランキング第三位。




「あのっ詩さん私食べたいですっパンケーキっ」





私は男の人を無視して歩く詩さんの腕を掴んだ。





きっとこんなチャンス二度と来ない。それなら今食べたいっ




私は必死に食べたいという思いを伝える。



もしかしたら身長差で上目遣いになってしまったかもしれないが……




「……っわかった、杏がそこまで言うなら俺も着いてく」




なんとか気持ちが伝わったのか、詩さんが折れてくれて一緒にパンケーキを食べれる事に!




気のせいかもしれないが詩さんの顔が赤く染まっていた気がした。