「詩とはどう?」




来賓の方とご家族の方が座る椅子を並べている時ちひろさんが話しかけてくれた。




ちひろさんは私の気持ちに気づかせてくれた人と言っても過言ではない。




私は詩さんが好きでちひろさんは私の事が好きと言ってくれた。




嬉しかったけど、その時はまだ恋とかわからなかったしソヒップの事があったからそれどころじゃなかったってものある。




ソヒップにはまだ在籍している。





正直もう辞めたかっけど松風さんの分まで私が頑張らないとと思いまだ続けている。




いつかあの世に行った時松風さんに胸を張れるように。




ちひろさんは私が何かを考えていると思ったのか私が口を開くのを待ってくれていた。




「特に変わった事はありませんかね」




詩さんと付き合う事になったと言っても元々同じ屋根の下で暮らしていたし特に変わった事はない。




「そっか」




少し安心したかのように笑うちひろさん。




私は詩さんの気持ちに気づいた時、嬉しさと同時に恐怖もあった。




私がこんな気持ちを抱いてもいいのかと。




もし気持ちを伝えて断られたら私はどうしたらいいのか。




もし拒否されたらと考えると怖くてしかたなかった。




きっとそれはちひろさんも同じだったはず。





だから私に気持ちを伝えてくれた勇気は一生忘れない。




「詩はちょっと独占欲強いかもだけどいいやつだから」




ちひろさんは詩さんの事を大事にしているんだろうな




とこの言葉を聞けば誰もがわかる。




「私もそう思いますっ」




椅子を持ち上げながら私は頷く。




詩さんは無口な時もあるけど周りの人はちゃんとわかっているから–––