「いただきます。」


いつもと変わらない日常。

二週間ごとに繰り返される病院食。

この病院に入院してからもう四ヶ月。

私は九月の終わり頃から変わらない日常を過ごしている。

変わらない日常と言っても、九月の初めはもっと違う日常を過ごしていた。

電車に乗って通う高校。

「久しぶり」と言い合う友達。

ルーレットで決められる掃除当番。

そんな日々だった。



九月の中頃から目眩や動悸が続いていた。

夏休みは運動していなかったから体が鈍ったんだろうと思っていた。

でも違った。

心配性の母に連れられて近くの病院へ行った。

医者に「この病院では検査ができません。総合病院を紹介しますので必ず検査してください。」みたいなことを言われた。

総合病院で検査をした。

癌だった。

完治率がとても低かった。

余命を宣告された。

医者から余命三年という言葉を聞いた母は、その場で泣き崩れた。

私もショックだった。

でもどうしても、「自分が死ぬ」という実感が湧かなかった。

「自分は死ぬ」という実感が湧かないまま、入院することになった。



入院生活を始めた最初は、緊張の毎日だった。

入院なんて一度もしたことがないからどう過ごせばいいか分からなくて、ずっと看護師さんたちの話を聞いていた。

一ヶ月ほど経って、やっと普通に話せるようになった。

最初はちゃんと病院で過ごせるのか不安だったけど、看護師さんが温かく接してくれたおかげで、私もこの病院に馴染むことができた。

病院には図書館や自習室もあって、体調がいいときにはよくそこで過ごしていた。



癌はなかなか回復しなくて、新年を病院で迎えることになってしまったけれど、それでもたくさんの友達と過ごす新年は楽しかった。

そんな日々を過ごしていた。



1月の中頃、ずっと空いていた隣のベッドに同い年だという男の子が入ってきた。


「俺、天野 柊(あまの しゅう)っていうんだ。」

「これからよろしくね。」


そう言って彼は左手を差し出した。










残り、二年四ヶ月_。