道具屋の看板娘、冒険者名は『死神』です。アイテム過剰購入冒険者にムカつきますが、ギルマスにはイヤな奴だと思われたくありません

「……からかっていますの?」

ギルドマスターはピクリとも動揺しない。

「いいえ、至って本気ですよ」

穏やかで、いつも通りの調子で答える。

「調子が狂ってしまいますわ」

ラヴィーネは気持ちを掻き乱されて、穏やかとはいかない。

「慎重に、サクサク行きますわよ……引き返すなんてありえませんわ。わたくしとギルマス、あなたがいますのよ」

ラヴィーネは頬だけでなく、体中に火照りを感じていた。

ダンジョンの中が明るくなくてよかったと思った。

「あなたのそういう所、好きですよ」

「ギルマス!」

「ギスギスしながら調査していては、見えるものも見落としてしまいますよ」

ラヴィーネはギルドマスターに言われて、大きく深呼吸し辺りをぐるりと見回した。

「闇深きダンジョンに宿る諸々の悪しき不可視のモノどもを、今此処に可視化せよ。『温光』!!」