道具屋の看板娘、冒険者名は『死神』です。アイテム過剰購入冒険者にムカつきますが、ギルマスにはイヤな奴だと思われたくありません

ギルドマスターを冒険者名で呼べなかったことが、寂しくてならなかった。

1度も一緒に冒険できなかったことも残念だった。

「あなたは、いつだってずるいですわ」

道具屋として、度々ギルドに押し掛け苦情を訴えにいくのは、ラヴィーネの日課のようなものだ。

嫌がらせでも、苦情をたらふく言いたいからでもなかった。

ギルドマスターがそこにいるからだということは、ラヴィーネ自身に未だ自覚はない。

でも、ギルドマスターに会わない日は、どこか胸の内がムズムズした。

家の側まで戻ってくると、ラヴィーネの父親が家の前で落ち着かない様子で、家の前を行ったり来たりしていた。

ラヴィーネの姿を見るなり、駆け寄った。

「帰ってきたか。怪我はないか。心配したぞ」

父親は矢継ぎ早に言いながら、ラヴィーネを家の中に入れた。

「ギルマスも一緒だったのだろう?」

「ええ。あの方とは現役をなさっている時に、ご一緒したかった」

ラヴィーネの頬に涙が、一筋伝った。