道具屋の看板娘、冒険者名は『死神』です。アイテム過剰購入冒険者にムカつきますが、ギルマスにはイヤな奴だと思われたくありません

ーーギルマスの手の内で思うように転がされていたんですわ。それに気づきもせずに

目に溢れた涙が、ラヴィーネの頬を伝った。

「どうして涙が出ますの!?」

ラヴィーネは溢れてくる涙を拭いながら、家路を急いだ。

思い浮かぶのは、ギルドマスターの顔だ。

ラヴィーネが幼い頃、父親から冒険の話をよく聞いた。

よく通る澄んだ声で美しく流れるような詠唱をする冒険者が居て、スゴくかっこいいんだと。

ダンジョン討伐から戻ってきた冒険者の勇姿は、誰もが眩しかった。

だが、ラヴィーネの目に一際、眩しく輝いて見えたのは、父親から聞かされた冒険者の姿だった。

それがギルドマスターだった。

引退しギルドマスターになったと聞いた時は、2日3晩泣き明かしたほどだった。

ギルドマスターはラヴィーネが冒険者になる前に、冒険者を引退してしまった。