道具屋の看板娘、冒険者名は『死神』です。アイテム過剰購入冒険者にムカつきますが、ギルマスにはイヤな奴だと思われたくありません

26階層もそろそろ終わりに近づいた。

特に変わった様子はなく、誰もが何も異変など起こらないのではないかと思い始めていた。

難なく倒せる程度のモンスターでも、20階層から26階層まで倒しつづけていると、さすがに疲れも出ていた。

「異変もなさそうだし、ひと息つくか、引き上げてもいいのでは?」

「だよな。ギルマスも死神も来ないみたいだし……」

ーーだよな。ギルマスも死神も来ないみたいだしーー

声が木霊した。

木霊は壁のあちこちから反射し、幾重にも響いた。

冒険者たちはぐるりと辺りを見回し、背筋に冷たいものが走るのを感じた。

「だっ、誰かいるのか!」

ーー誰かいるのか!ーー

声はまた幾重にも木霊し、響いた。

先頭の冒険者が前方の暗がりへ、灯りを向けたが何もない。

ただ、灯りを向けても不気味なほどに暗い。

凍てついた空気が奥の方から流れてくる気がした。