そちらを見ると、そこには小さなおじいさんが立っていた。

身長は私の肩ぐらいまでしかない。

頭はハゲているが、ヒゲが長い。

床にくっつきそうだ。

そのヒゲのせいで、表情がうかがえない。

カナ爺、本名は金文というのだな。

初めて知った。


「帰ってきちゃいかんのか」


「そんなことは言っておらんだろうが。

で、そっちが由香か」


私は慌てて頭を下げた。


「はじめまして。

ヒト族の由香です」


カナ爺はフンッと鼻を鳴らした。


「由香が来るとわかっておったからわざわざヒト族の姿で出てきたんじゃろうが。

気に入られようとしておるのか?」


「お前さん何イライラしとるんじゃ」


「しとらんわ!」


カナ爺、やけにつっかかる。

仲が良いからこその口の悪さなのか、本当に嫌いなのか。


「まあ立ち話も何じゃから、ワシの部屋に来るか?

金文の部屋は今はないからのう」


「別にお前に話があるとか言っとらんだろうが!」


「けど由香は何か話があるから来たんじゃろ?

まさか観光しに来たわけではあるまい。

文句言っとらんとさっさと着いて来い」


そういうとその小さなおじいさんはこちらに背を向け、彼が入ってきた扉から出て行った。